必読!おすすめビジネス書のご紹介

ビジネス書、何を読むべきか悩みますよね。ランキング上位を買ってみても、案外学びにならなかったり。そんな思いから、おすすめの本の概要を書くことにしました。外資系戦略コンサルなどで勤務した私が、おすすめの本をご紹介します!参考になれば幸いです!

巨象も踊る(ルイス・ガースナー)

今にも倒産しそうなIBMを見事に立て直したルイス・ガースナー。彼の考え方や行動が追体験できる形で書かれている名著です。よくここまで詳細に覚えているな、というくらいの粒度感で、楽しく読めます。

巨象も踊る

 

抜粋と考察

ガースナー氏は、IBMのCEOを引き受ける前に様々な事前調査を行った上で、初日の経営幹部会議においてこれらのことを伝えました。初日から会社の問題点をバシッと指摘するCEOがいたら、幹部も一目置きますよね。スタートは大事ですね。

  • 組織階層は私にとって意味を持たない。会議には地位や肩書にかかわらず、問題解決に役立つ人のみを集める。委員会や会議を最小限にまで減らす。委員会で決定する方式は取らない。率直な意見交換を活発に行おう。

  • 今後数週間に開く会議を私に知らせ、どの会議に出席すべきか推奨してほしい。

  • 最初の90日に取り組むべき優先課題を発表した。

  • そして30日以内に終えるべき課題も示した。

 

当時のIBMは「内向きで殿様商売。顧客のことなんて一ミリも考えてない」と思われていたようです。そんなIBMのCEOになり、今までとは劇的に違うということを示さないと顧客も銀行も離れていってします。そんな場でガースナー氏はこのように行動します。

大勢の顧客を前にした会議において、「これからIBMの舵を取る人間は元IBMの顧客であり、顧客の目線を重視しながら舵をとっていく」という話をした。技術上がりの偉そうな人間ではなく、IBMの官僚体質に被害を受けている1人の人間として。

官僚的で社内に意識が向きがちな文化を、顧客重視に変えることがまずは何よりも重要だった。

社内に顧客第一であることを植え付けるため、経営幹部200名以上に対し、今後3ヶ月間で5つ以上の大口顧客を訪問することを指示した。そのたびに1〜2ページの報告書を私と、顧客の問題を解決できそうな担当者に送るように求めた。

はじめは懐疑的であった幹部たちも、私が報告書に逐一目を通していることがわかるとにわかに動きが良くなり、反応が良くなった。

 

IBMはつぎはぎだらけの会社で、それをまとめ上げるのは至難の技でした。人、システム、そして文化を変えるために多くのことを一気に動かしました。

社内システムもバラバラだった。それらを統合するために順次ではなく、一斉に手をつけた。全社で100以上のプロジェクトが走ることになったが、一つ一つやるよりもうまくいったと思う。

IBMほどの複雑な会社では、社外の人材を連れてきても生え抜き社員よりもうまく経営できるとは思えない。そのため私は、すべての事業部門のトップを生え抜きにした。もちろん、やり方を変えてみようとする人材を探した。

そのために報告書に目を通し、顧客への対応を観察し、会議で考えが明確かどうかを評価した。私が叱責しても、信念を貫く勇気があるか、それとも方針転換するかを見た。各自の事業の問題を率直に報告できているかも見極める必要があった。

そうして、信頼でき、部門建て直しを任せられる人材を探していった。

部門間にまたがる問題も多く合った。それらを扱うため、部門横断のエグゼクティブコミティーを創設した。

そこを政治の場にしないために、その場で扱わないことを明確にした。その会議では事業部門の問題解決法などは受け合わないし、判断を下すこともない。議題は複数の部門をまたぐ方針の問題に限った。

 

それを印象づけるのがこの例です。驚きました。

世界の各事業部が独自に広告代理店を起用し、合計70もの代理店が思い思いの広告を打っていた。別の事業部が、同じ媒体に、違う趣旨の広告を出すということもよくあった。それを全社で統一するため、抜本的な改革をしなければならなかった。関係者の意識を変えるため、全員が集まる会議の時に、壁一面にIBMが作成している広告や包装を張り、いかに矛盾しているかを示した。百聞は一見にしかず、で効果抜群だった。

その後、全世界の広告を一手に任せる、という一大コンペを行い、1社を選抜、すべての広告をそこに発注することで、大幅なコストダウンと、何よりも対外的メッセージの統一がはかれた。

 

同じような話が、戦略の面でも発生しています。このようなことはどの会社でも頻繁に起きているのではないでしょうか?もちろん、気にしすぎてイノベーションのジレンマに陥ってもいけないですが。

当時IBMはアプリケーションソフトも作っていた。しかしメインはメインフレームであり、ミドルウェアであった。しかし当時、顧客は最初にアプリケーションソフトを決め、その販売先にメインフレームのアドバイスを求めるようになっていた。

IBMがアプリケーションソフトを作ることで、アプリケーション会社にIBMが嫌われ、結果IBMメインフレームを顧客に提案しない、という状況になっており、アプリケーションソフトの売上が少し増えても、メインフレーム等の売上が大きく減るという状況になっていた。

そのためアプリケーションソフトの開発から撤退することを社内の反発を押し切って決定した。

 

結局、会社は文化が最重要だよね、ということが書かれています。

IBMでの経験を通じて、私は企業文化は経営そのものなのだ、と感じるようになった。素晴らしい文化があれば、どんな組織であっても成功できる。

ルールや規則は初め、目的があって作られる。しかし年月が経つうちに目的は忘れられ、規則だけが一人歩きするようになる。それを変えるには、改めて目的に沿った規則にトップが変えなければならない。

成功度を測る基本的な指標は、顧客満足度と株主価値である。

 

文化を表す言葉がたくさんあると、結局理解ができない。そのため勝利、実行、チーム、の3つに私が求める姿勢を要約した。

 

また、経営者としてはやることを絞って実行する力が強いこと、まさにGritが大事と書かれています。

成功を収めている経営者には以下の3つの基本的な性格がある。

  1. 焦点を絞り込んでいる

  2. 実行面で秀でている

  3. 顔の見える指導が隅々まで行き渡っている。リーダーシップ。

大企業は権限分散すべきだという議論は常にある。しかしデメリットもある。分散された権限の下では、部門をまたいだ問題の解決や意思決定の際に、中央集権型よりも多くの時間がかかってしまうのだ。

事業再編をするのであれば、人々の行動を変えなければならない。そのためには報酬制度を抜本的に変えなければならない。それを同時に行う覚悟がないのであればやめておいた方が良い。

 

 

タイトルの通り、巨象も踊るんですね。数年であの規模の会社がV字回復するのは本当に驚きです。わたしも、こういう仕事をしたいです!

 

絶版なので中古しか見つからないですが、ぜひ読んでみてください! 

巨象も踊る

巨象も踊る