アマゾン・メカニズム(谷 敏行)
GAFAの中で、一番組織として成熟し、強みを発揮していると言われているAmazon。その仕組みを、特にイノベーションを生むという観点から記載している本です。
この仕組み、日本の大企業が実践できたら日本発のイノベーションがめちゃくちゃ増えるんじゃないか??と個人的には期待しています。
当たり前のことを徹底的に、政治抜きで行う。本当に素晴らしいです。
アマゾンにはリーダーシップ原則があり、16項目の行動指針を全員に求めている。
採用も人事評価も、リーダーシップ原則が基準
アマゾンの日常業務に、そのリーダーシップ原則は溶け込んでいる。例えば社員を採用する際には、募集ポジションでどのリーダーシップ原則が重要であるかを最初に決める。
今回募集するマーケティング担当者は、顧客動向のデータ分析や調査を行います。それに強く求められるリーダーシップ原則は、 Dive Deep、Learn and be Qurious、Customer Obsessionの3つです。 面接に向けて、この3つに関連する質問を用意して評価しましょう。
採用だけではなく、人事評価もリーダーシップ原則に基づいてなされる。
自分の強みや弱みがどのリーダーシップ原則にあるのか、メンバーや上司からフィードバックを受ける仕組み。 結果を踏まえて、次期に重点的に取り組むテーマを決める。
新規事業の責任者は、他と兼任させてはならない。
新規事業を立ち上げる際は、他のスタートアップ企業と戦うことを想定しなければならない。つまり100%の時間と熱意を投入している起業家と戦うということである。
・新規事業について全権を与えられた人の存在が、誰から見ても明らかかどうか
・そのプロジェクトの責任者は、他部門の同意を得ることなく意思決定できるか
・責任者は100%の時間をそのプロジェクトのために使える体制になっているか
これらの問いのどれかがノーであるなら、そのプロジェクトリーダーは一般的な起業家よりも不利な状況に追い込まれていることになる。
そのため、アマゾンでは新規事業の責任者は社内の他事業とのカニバリを気にすることなく、全力で事業にコミットすることが 許されているし、期待されている。
イノベーションへの挑戦と失敗は切り離せない双子である
ベゾスは、社内外で何度も何度もこのように繰り返し、 挑戦することの重要性を説いている。
10%の確率で100倍のリターンが期待できる賭けがあるなら、毎回、賭け続けなくてはなりません。しかし、賭ければ10回のうち9回は失敗するのです。
プロジェクトの失敗と人事評価を分離する
いくらトップが失敗を恐れず挑戦せよ、と言ったところで、人事評価がそれを体現していなければ社員は挑戦しなくなる。 アマゾンの人事評価では、アウトプットとインプットを分けて考える。
アウトプットとは、担当した事業から生み出される売り上げやキャッシュフローなどの結果を指す。
それに対してインプットとは、アウトプットを生み出すために準備した様々なリソースや手段を指す。
そして、自分たちがコントロールできるのはインプットであり、アウトプットは結果に過ぎないというのがアマゾンの基本的な考え方である。
仮にプロジェクトが失敗に終わったとしても、インプットが優れていたならば、何か他の要因によって成功しなかったと判断される。
その評価の仕方が、社員の失敗を恐れない考え方を生み、組織としても果敢にチャレンジするようになっていく。
キャリアは自分で選択をする
アマゾンでは定期的な人事異動の仕組みは無く、本人が希望しなければ、昇進も異動も基本的にはない。(おそらく、評価が低い場合はクビになるのだと思いますが...)
新規プロジェクトのリーダーやメンバーになる場合、たとえ上層部から指名を受けていたとしても、社内公募に応募する形をとる。 そして他の応募者とともに面接を受け、該当する業務で重視されるリーダーシップ原則に強みがあるかを判断される。そこに社内政治や感情が働く余地は無い。
ポジションは、社外にも公開されており、社外からの求職者とも争うことで、社員の惰性による異動を防いでいる。
組織的な肯定(Institutional Yes)
ベゾスは、大きな失敗の多くは、取りかかって失敗するより機会を見逃した失敗によるものだと思う、と言っている。
組織としてイノベーションを多く生み出すための課題は、提案されるアイデアの数が少ないことではなく、アイデアが提案されたときに、意思決定者が実験にゴーサインを出す回数が少ないことにある、とベゾスは考えている。
この課題を解決するために、ベゾスは提案を受けたときに
「なぜやらないの(Why not?)」
と質問することにしている。リーダーがそのように質問することで、提案者は 勇気づけられ、実現する方法を本気で考えるようになるからである。
大事な事は、良いアイデアを提案するメンバーがいたら、その背中を押し、前進させることがリーダーの重要な役割であるということである。
悲しいかな、逆に質問攻めにすることで、やらない方向に圧力をかけるリーダーがとても多い。それでは挑戦するカルチャーは育たない。
そして、トップマネジメントは、楽観主義の体現者であるべきである。
もともと新規の挑戦の90%以上は失敗するのだから、どんどん挑戦を重ねていかないと成功事例は増えない。
また、経営目線では、失敗した場合に大きな傷を負うことがないよう、小さな投資から始めることも重要である。
Day1の精神を大切にし、社内プロセスに重きをおかない
会社が組織になってくると、正式なプロセスを踏んだかどうか、を重視するようになり、その目的や結果がないがしろにされることが起こり得る。それはDay2の状態である。
そうなってしまうと本質が見えなくなってしまうため、Day1の気持ちを忘れてはならない。
顧客にとって、昨日のWowは今日の当たり前
「One thing I love about customers is that they are divinly discontent.」
そのため、常に顧客の期待値を超え続けるために自分たちが成長し、新しい価値を生み出し続けないといけない。
出典
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