必読!おすすめビジネス書のご紹介

ビジネス書、何を読むべきか悩みますよね。ランキング上位を買ってみても、案外学びにならなかったり。そんな思いから、おすすめの本の概要を書くことにしました。外資系戦略コンサルなどで勤務した私が、おすすめの本をご紹介します!参考になれば幸いです!

V字回復の経営(三枝匡):抜粋編

前回はまとめを記載した三枝さんのV字回復の経営ですが、今回は抜粋を記載しました。ストーリーの抜粋ではなく、重要と思ったところの抜粋となっています。参考になれば幸いです。

(なお、本書を購入する際は、文庫版ではなく単行本版をおすすめします。実際に動のリーダーとして動いたコマツの鈴木さんとの対談が載っているのですが、とてもリアルでそれだけでも購入する価値があると思います!)

 

単行本版

 

前回

 

<抜粋>

経営改革はスポンサー役、力のリーダー、智のリーダー、動のリーダーの4人が揃わない限り、成功を収めることはできない。
特に力のリーダーのリーダーシップが大幅に欠落する組織では、トップが格好をつけて改革をぶち上げる事はご自由だが、いずれ途中で頓挫して雲散霧消する可能性が高い。
 
一般に企業の業績悪化と社内の危機感は相関しない。むしろ逆相関と言っても良い。業績の悪い会社ほどたるんだ雰囲気であることが多い。
戦略思考の強い企業では感情的な、「好きか嫌いか」という反応を、「正しいか正しくないか」という論理的な反応に置き換えることができる社員が多いが、そうでない企業は感情的な反応にとどまる社員が多い。つまり現状を突きつけられたとき、理解する前に感情で反発する社員が多いのである。感情が強い会社において論理を受け入れてもらうためには、組織の目標や行動の意味をあらかじめ共有しておくことが重要である。「V字回復を2年以内にできなければ事業は閉鎖する。それを防ぐために全力で改革をする」ということが、事前に理解されているかどうかが極めて重要となる。
 
人は良く優秀だが、リスク戦略の実行能力の低い人材を難しい局面で力のリーダーにしても、結局その人は難しい体質転換を指揮することができない。時間だけが過ぎていく。
・あの人はいい人だけど口だけなんだよね...という評判になる
・始めは改革しようと動いても、いろいろな人からの批判、懇願などを受けるうちに、現状維持になってしまう。
 
改革にまつわる社員のパターン

 

 
ミドルが問題を他人のせいにしたがるのは、(組織構造や権限問題、情報量など)ミドルが自分の裁量で解決できない問題があまりにも多いからである。ミドルが動きやすくしてやれば、組織は急に元気になる。
 
「トップの覚悟を社員に示した方が良い。再建できなければ事業売却か閉鎖とする。」社員の気持ちの甘えを殺すには、退路を断つことが最も有効である。
 
重要なことだが、エリートのいない組織で変革は絶対に起きない。エリートは選ばれた者というよりも、「集団への責任を自覚した者たち」と言える。私の経験では、どんなに元気を失った企業でも何人かの気骨の人材が必ず隠れているものである。
 
成長していない企業では、会議において顧客の名前は出ることがなく、内向きの話ばかりが繰り広げられる。負け戦をしていると言う自覚がなく、会社が赤字でも、社員個人は赤字の痛みを感じていない。責任を皆で薄めあっている。
その一つの原因はライン組織とスタッフ機能のマトリックス構造を有しており、それぞれの利害がぶつかることであった。
 
赤字企業の特徴として、一つ一つの商品の原価・営業利益を把握できていない。黒字に見せかけるために限界利益で議論をし、たくさんの商品を丸めた形で議論が行われている。それにより赤字の原因を個々の現場に訴求できない。それが見えなければ、打ち手を考えることすらできない。
 
適切な経営の第一歩は、厳しい現実直視から始まる。目をそらさずに現実を様々な角度から眺め、実態を正確に見極める。
 
開発の責任者と力のリーダーが初めて面談する時、事実を確認しながら、どこに問題点があるのかを探り、その中でその開発責任者の責任を確かめていった。初めから「お前はだめだ、なぜこうできていないんだ」となっていたら心を閉ざしていたであろう責任者も、事実を積み上げていく中で自分の反省点を認識することで、心理的な反感を最小限に抑えられた。
 
 
ダメ会社は組織ごとに被害者意識を蓄積させている。全体の負け戦は自分のせいではないと全員が思っている。しかも、その状態のまま立て直そうと何種類もの改革を頻繁に行った結果として、組織変更等に対する改革疲れを起こしている。
 
タスクフォースの検討において重要なポイント。
「君たちの検討に聖域は無い。事業をバラバラにしようが、工場を閉鎖しようが、人員を減らそうが何でも良い。すべての選択肢を考え抜いてもらいたい。」
スタートの段階で制約をつける事はしない。途中で制限をかけることがあっても最初からやる事はしない方が良い。
 
 
タスクフォースの最初は、2泊3日の合宿で始まった。まず現場の問題点を各自がとことん上げることから始まった。
500枚のカードが出現し、その分類をまずはタスクフォースメンバーのみで行った。極めて難しく、メンバーは一晩悩んでも答えは出なかった。
翌朝、智のリーダーが商売の基本コンセプトの説明を始めた。それは「創って、作って、売る」、という商売の基本サイクルであった。
 
改革のコンセプト1 「創って、作って、売る」
開発が顧客の意見を聞いて設計し、生産が顧客のクレームを聞きながら生産し、営業はそれを顧客のニーズに基づいて販売をする。営業はその過程でお客さんの声を社内にフィードバックし、マーケティングから開発・生産までの行動に反映する。
この基本ができていない企業はニーズとずれたものを開発し、負け戦を続け、内向き組織になっていく。
 
その基本コンセプトを仮に達成できるとしたら解決するであろう課題を隣の壁に移していった。すると300枚のカードが移された。つまり問題点を分類するのではなく、あるべきコンセプトの導入により解決される問題点を取り除いていくという方法で分類した。

 
そして移した300枚のカードは下記のいずれかに分類できた。そしてこれを裏返せば組織改革のゴールとなる
 
肥大化した機能別組織の10の欠陥
  1. 事業責任がわかりにくい
  2. 損益責任が曖昧
  3. 「創って、作って、売る」が融和していない
  4. 顧客への距離感が遠い
  5. 少人数で意思決定ができない
  6. 社内コミュニケーションが悪い
  7. 戦略が不明
  8. 新商品が育ちにくい
  9. 社内の競争意識が低い
  10. 経営者的人材の育成が遅れている
 
 
続いて競合との戦い方に話は移る。ダメな会社は「勝ち戦の循環」のどこかが切れている。
 
改革のコンセプト2 勝ち戦の循環。
  • 顧客ニーズは時代の変化とともに変わっていき、それとともにKSFも変わっていく。常に追い続ける。
  • 誰が本当の競争相手なのか、把握する
  • そして定義された市場の中で、成長分野に参入する
  • 成長分野にあえてリスクを負い、常に先陣を切って参入していく
  • そして勝つまで執拗かつ集中的に勝負する
  • そのために、優先度の低い事業から経営資源を移動させる
  • そのセグメントでNo1になったあと、その市場が後退する前に次の成長分野に参入していく
 

 
残った200枚のカードは、下記の問題点ごとに順番に分類していき、いよいよすべてがなくなった。
「事業全体の事業戦略を明確に示せば解決できる問題点」
「個々の商品戦略を明確に示せばよくなる問題点」
「人の評価のシステムを変えれば解決できる問題点」
「数値管理、つまり経理報告や原価計算などの手法を良くすれば解決できる問題点」
「情報システムを変えれば解決できる問題点」
「教育・トレーニングを充実すれば解決できる問題点」
最後に…
「各部署の固有問題として、それぞれの内部で解決改善に取り組むべき問題点」
 
 
分類したあとは解決策を考えていく。が、その前にもっと大事なことが有る。それは改革の原動力の3つ目、人のマインド・行動である。社員のマインド・行動を束にするには、社員の心に響く明確な戦略が示されること、社員が迷いなく走れるようにシンプルなビジネスプロセスが組まれていること。この2つがカギだ。
 
改革のコンセプト3 事業変革の3つの原動力
1.戦略
2.ビジネスプロセス
3.マインド・行動
 

※ ?に入るのがマインド・行動

 
改革シナリオを作っている最中に起こる社員からの批判的な動きは放っておく。社内の小さな反対行動にいちいち懲罰的行動を取れば、改革は旗揚げもしないうちに感情論にすり替えられる可能性がある。しかし、改革シナリオが発表され、勝負が始まったとに社内で起きる問題は徹頭徹尾、かなり些細なことまで指導することが重要である。そうしないと社員の行動パターンはかわらないからである。
 
 
社内に現状把握の説明をするときは、そして特に「強烈な反省論」を迫るときには、徹底的な事実・データによる追い込みが不可欠である。言い切る確証が得られないこと、反駁される余地の有るものはプレゼンの内容に含めてはならない。
一言一言に必ず事実や数字の裏付けが示されなければならない。
 
社内プレゼンを考えるとき、社員の心理をどこまで追い詰めればよいのか、そして、超えてはならない線がどこにあるのかを必死に計算していた。そして、タスクフォースの仕事を多くのミドル層に手伝ってもらうことで、「自分たちの問題」と感じてもらう仲間を増やしていった。
しかし、悪影響を及ぼすものは入れない(入ってきたとしても刺激しない)ということが重要。
 
 
戦略の内容の善し悪しよりも、トップが組織末端での実行をしつこくフォローするかどうかのほうが結果に大きな影響がある。一方で戦略を決定したらそれで自分の役割がすんだつもりになるトップは多い。
おなじく、営業部隊に営業先の決め方、KPIなどの戦略指針を与えても、その実行をモニターするシステムがなければ戦略は往々にして骨抜きになる。
 
組織のスリム化の結果、余剰人員が10%程度出てくる。しかし、社員数をあと10%減らしたからと言って、この大赤字から脱却することはできない。そんな中途半端な人減らしは最悪の選択肢だと思っていた。むしろ「攻めの人減らし」として余剰人員を開発や営業に振り分けたほうが指揮も実績も上がりやすくなるだろう。
 
 

 

 

 
改革シナリオを社内で発表したあとは、猛烈な勢いで力のリーダーと動のリーダーが顧客回りを始めた。顧客も代理店も、自社に対して不信感を根強く持っていた。品質を良くするだけでなく、儲かる仕組みを提供しない限り、代理店がこちらを向かないことは明らかだった。
 
顧客を訪問したとき、顧客の厳しい意見を聞くだけではなく、改革の内容、過去の反省点を述べ、かつ新しい提案を持っていった(両社の技術陣の技術交流をやらせてほしいという提案)
また、急遽代理店を集めた代理店会を行い(このスピードも大事)、過去代理店会に出席したことがない社長も出席させ、その場で謝罪をして、今後の体制を発表してもらった。それには代理店各社も驚き、本当に変わるのか、と意識した。マーケティングのプレゼンも以前は「性能が上がりました」だったのが「顧客のメリットがこうあります。だからこういう価値があります」という顧客目線に変わっていた。
 
 
改革シナリオが明快なら、社員の気持ちの効用と行動変化が生まれ、早期に改革効果が出始める。改革一年目に劇的な成果が生まれる場合、その成果の半分以上は社員の「やる気」の高まりによると思われる。その効果が出ている間に、経営改革の「仕組みによる強さ」の構築を急がなくてはならない。それは2年めが勝負だ。「創って、作って、売る」の仕組みを定着させ、戦略を末端まで徹底し、多少社員がサボっても改革効果が出るところまで持っていかねばならない。
 
改革では小さい成果であっても早期の成功を収めるこそが重要である。それにより「自分たちは間違っていなかった」という自信を得られる。また、改革抵抗者の意識を変える最大の武器になる。
 
改革テーマは広く浅く推進するのではなく、改革の突出部分を設定し、それについては細かいところまで一気に改革する(本書では、33ヶ月かかっていた開発を主力1製品は6ヶ月に縮めるということや、営業・マーケの仕方を顧客目線にすること)。一方で、その間組織の安定部分として置いておく部分は放っておき、リスクは限定するのである。
そして、あるビジネスユニットで成功した改革事例は、即座に隣のビジネスユニットに水平展開する。うまく行ったものをすぐに広げるのである。
 
この改革で成果が出るということは、競合企業が苦しむということである。競合企業の対策を遅らせるためにも、自社の改革や戦略のことはメディアや業界会合でなるべく伏せることが重要である。
そして、改革は組織に負荷をかけ、緊張を強いる。そのため、何年もかけてはダメなのである。半年や1年というスパンで、一気に実行しないといけない。
 
 
以上、長文失礼しました!