サブスクリプション Subscribed(Tien Tzuo, 桑野順一郎)
2017年の本ですが、改めて読みました。Zuora創業者の本です。
課金体系ではない、ビジネスモデルの革命だ。そしてそれは顧客中心であるビジネスの大本に帰るものであり、顧客中心のビジネスをしないとこれからの時代は負けてしまう。
今あらためて読むととても理解が深まりました。(リアルタイムでこのあたり深く理解して行動しないと、先手は打てないですね...反省です。)
サブスクリプションは課金体系の変更ではなく、ビジネスモデルそのものの変革である
いま、セールスフォースやアマゾンなどの世界の破壊者たちが、企業と顧客との関係を大きく変えた。今では企業は顧客と直接つながっており、我々は誰に売っているのか、その顧客は何を求めていてどんな行動をしているのか、を知っている企業が成功している。
かつて、経済がローカルだった時、人々は知っている人からものを買った。売る側も買った人のことをよく知っていた。それが産業革命で大きく形を変え、ものは大量生産し誰かに売る時代になった。
サブスクリプションの出現により、それが元に戻ろうとしている。一番の特徴は、相手がわかっていると言うことである。そして相手の幸せがわかると言う事でもあり、win-winになりやすいビジネスモデルである。
サブスクリプションを単なる課金形態の変更と捉えてはいけない。ビジネスモデルの変革であり、顧客とダイレクトにつながり、個々の顧客のニーズの変化を常に細かく把握し、永遠のベータ版としてサービスを進化させ続けながら、その価値に見合った科学やプライシングモデルを提供する。それにより長期にわたる顧客関係を構築し、そして収益化を実現すると言う新しいビジネスモデルである。
ビジネスは真に顧客中心の時代となる
大量に作り、誰かに売る、のではなく、ひとりひとりの顧客を(データで)見極め、本当に欲しい物を提供しないと生き残れない。誰かが読んでいるかもしれない新聞に広告を載せる、ではなく、◯◯さんが検索したその瞬間に広告を出す、に企業のマーケティングも変化している。
サブスクリプションへの移行期には痛みが伴う。短期的に見れば単価は下がり、売り上げは減る。
しかし、売り上げの8割がサブスクリプションの場合は、来年もほぼ8割の売上は保証されていると言う圧倒的な強みがある。つまり、期初に売上の8割は確定していて、そこからどう伸ばすか、という別次元の考え方ができるようになる。
しかし、サブスクというのは課金体系の変更がメインではない。サブスクの場合、顧客が中心となる。製品中心のアプローチとは逆。そして、顧客の情報も取れるようになるし、取らないといけない。
顧客の情報が取れるようになるので、市場調査を兼ねたビジネスができる。もうアンケートやインタビューをするより、利用データのほうが真実を語ってくれるようになる。
素早くリリースして、素早くフィードバックを得て改善する、というサイクルにより、顧客中心のものづくりができるようになる。これはソフトウェアには限らない。
そして、サブスクリプションにより、パッケージの機能追加によるアップセルやクロスセルがしやすくなったし、しないといけない
- サイモン・クチャーは、サービスの加入者の7割以上が基本パッケージにとどまっているようなら早晩立ち行かなくなると言っている
- クロスセル顧客のチャーンレートはそれ以外の顧客の3分の1以下
高い成長が必須となる
マッキンゼーの調査によると、ソフトウェア分野では年間成長率20%を下回ると、92%の確率で倒産するらしい。つまり、高い成長がマストとなる。(これは市場が20%で伸びるため、それを下回ると強者に負けるということ。)
高い成長率を維持する方法は、成長の道筋を複数確保し、複数の成長戦略を採用することである。
- 最初の顧客グループを獲得する。ニッチを取る。(小さいという意味ではなく、絞り込むという意味)
- チャーンレートを引き下げる
- 営業チームを拡大する (チャーンレートを引き下げる前に営業チームを拡大しても意味がない!穴の空いたバケツに水を入れるようなもの。)
- アップセルとクロスセルで顧客価値を高める
- 新しいセグメントに参入する
- 海外展開を図る。想定よりも早めに。
- 買収によって最大限の成長機会をつかむ
- プライシングとパッケージングを最適化する。経営陣はこれをこの課題について時間を使って考えるべき。
無料の体験版を提供する際、自社のロゴや名前を入れることで無料で有効な広告ツールにすることができる
- docusignや、camscanner の例
さらに、登録した個人ユーザの中に同じドメイン名がないか追跡し、特定のドメインからのトラクションに気づいたら、その顧客をビジネスプランにアップセルするターゲットにすることができる。つまり、セルフサービスチャネルがアップセルの経路になる。
サブスクリプションにおける損益計算書
サブスクリプションビジネスにおいては、バケツから水が漏れていない限り利益のすべてを将来の成長のために使う事は、完全に理にかなっている。
サブスクリプションビジネスでは、財務部門は何が起きたかを説明するのではなく、会社のビジネスをどう成長するのかを決める重要なポジションである。つまり、年間収益のうちどの程度将来の投資に回すのかを決めることになる。
この図に於いて、定期コスト(ここでは開発チームコスト、その他コストを入れている)以外は、全て使って次なるARRの獲得に投資して良い、ということになる。具体的にはセールスチーム、マーケティング、CSチームなどに投資をして良い、と。
この時、エンジニアを増やすか、セールスを増やすか、というのが議論対象となる。エンジニアを増やすのを1年我慢すれば、その分ARRが増え、つまり予算が増える。いま、どこに投資をするのか、という決断となる。
モノについても、顧客の欲しいものは「所有」から「アウトカム(成果)」に変わってきた
必要だから買って持っておく、ではなく、必要なときだけ借りる、に変わっていく。もちろんその過程で顧客データを取ることで、企業は顧客が本当に求めていることがわかる様になる。今後、全ての企業が自社IDを作り、顧客に付与するようになるだろう。
- 壊れているかも、電池切れかも、とかそういうことは気にしたくない
- 所有ということもこだわらない
- toyota IDを使って、車を買い、修理し、保険に入り、、、みたいなことになる。それにより、課金体系はどうあれ、本質的にはサブスクリプションの世界になる。
企業もプロダクト中心から、顧客中心へ
- もう買うものを店に行って選ぶ時代じゃない。Amazonが自分が欲しいものを、毎日家まで届けてくれる時代
- 音楽も、買って持つ、のではなく聞く権利を買うよね
製造業もサービス業に変わっていく時代。
• 自分の製品をどのくらい使っているのか、しっかりと追えるようになったし、そうなると使用する権利を売るほうがお互い良くなってくる。コマツやキャタピラ、GEなど。
サブスクリプションでは全てが変わる
- 課金体系ではない。ビジネスモデルのイノベーションである。
- サブスクリプションビジネスでは、プロダクトは「永遠のベータ版」
- マーケティングは継続的なエクスペリエンスの提供。CXを磨くことがマーケティングにつながる
- ファイナンスもLTV(顧客の生涯価値)がベースとなる。
- 翌年が始まった瞬間にどのくらい稼げるのかわかっているので投資計画が強気に立てやすい
- Netflixは、年初に13BnUSDの収入が確定しているようなもの。(2017年)
- かつての大量生産と比較されるのは「アジャイル」。常に変化する顧客のニーズに敏感に対応。これは少量で迅速に。失敗したらすばやく次に行けばいい。
- 顧客IDに基づくロイヤリティプログラムにより、顧客を囲い込む。改善する商品を触ってもらえなければ意味がない
参考
Subscribed Zuora社長Tien Tzuo
https://www.youtube.com/watch?v=9YSx_xLrBzU&feature=youtu.be
(基本は本の内容をプレゼンしてる感じ。でもギュッと詰まっててわかりやすい。)
以上です!
出典