必読!おすすめビジネス書のご紹介

ビジネス書、何を読むべきか悩みますよね。ランキング上位を買ってみても、案外学びにならなかったり。そんな思いから、おすすめの本の概要を書くことにしました。外資系戦略コンサルなどで勤務した私が、おすすめの本をご紹介します!参考になれば幸いです!

ついやってしまう体験の作り方(玉城真一郎)

ゲームの体験デザイン、よくUX(User experience)と呼ばれる領域ですが、とても良くできていると思いませんか?素晴らしいゲームをプレイしていると、自然と誰でも引き込まれていくし、時間を忘れてやっていることが多いですよね。

その体験を任天堂で設計していた作者の本です。

読みながら、「なるほど、あれにはそういう意図があったのか!」と驚かされます。

これからの時代は、MBAよりデザイン、とよく言われます。それくらい、デザインの重要性(イラストのようなデザインだけではなく、体験のデザインのことです)が高まっています。

 

ぜひ、本書も読んでみてください。本そのものの構成にも、体験デザインが工夫して散りばめられていますよ。

「ついやってしまう」体験のつくりかた――人を動かす「直感・驚き・物語」のしくみ

 

 

初頭効果を使って理解してもらう

ゲームのスーパーマリオには、4種類のアイテムが登場します。では、その4種類のアイテムを初めて登場させるのは、ステージ全体に対してどのあたりが良いでしょうか?プレイヤーが飽きずに、かつストレスなく習得してもらうためにはどこで登場させるべきでしょうか。
 
答えは、4種類のアイテム全てを最初のステージに集中させることです。
 
学習心理学における初頭効果。時間をかけて学んでいく時、体験のはじめに集中力や学習効率が高まるというものです。スーパーマリオはしっかり学んでもらわなければならない4つのアイテムを、プレイヤーの集中度が高い最序盤に集中させることで、複雑さや難解さを回避しています。

 

 
 
 

直感のデザイン

人はなぜ、ゲームを遊ぶのか?
 
それは、ゲーム自体が面白いからではなく、
プレイヤー自身が直面する体験そのものが面白いからです。
私たちの脳はいつだってこの世界を理解したがっています。そんな脳がゲームを好むのは、ゲームが「直感的な理解」という体験をもたらしてくれるからであり、プレイヤーに寄り添った体験デザインの結果だと言えるでしょう。 

 

しかし、直感のデザインが抱える致命的な欠陥があります。それは疲れと飽きです。それを解消するために、驚きのデザインがあります。
 
 

驚きのデザイン

ドラゴンクエスト1では、プレイヤーは多くのことを学習しなければなりません。集中力が続いているうちはそれを楽しみながら学んでくれますが、休み時間なしで学習を続ける事は、疲れと飽きにつながります。
 
そこでドラクエでは、「ぱふぱふ」を登場させています。
 
この後も学習することが続くのだろうとプレイヤーは思っていますが、そこにちょっとセクシーで拍子抜けすることを登場させることで、プレイヤーの予想は外れ、休み時間のようになるのです。
 
プレイヤーの予想を外すことを考えたとき、2つの思い込みが活用できそうです。
1.前提への思い込み→「このゲームは〇〇だ」
2.日常への思い込み→「タブーは現れないはずだ」
 
ドラクエにおいては、真面目でコツコツと続けるものである、というゲームへの思い込みと、まさか少年向けのゲームでセクシーなシーンは登場しないだろうという思い込みをうまく使い、プレイヤーの脳の予測を外しに行っています。それにより集中して学習をしてきたプレイヤーの脳に一時的な安らぎを与え、再度学習に向かってもらうようにしています。
 
 これを違和感なく、且つ面白く実装するために、「ぱふぱふ」が使われているのですね。
 
 

プレイヤーに成長をもたらす

読んでも学びにならない本を読む人はいないように、プレイヤーが自分の成長を実感できないゲームはあっという間に捨てられてしまいます。
ゲームデザイナーは、物語だけでプレイヤーを感動させようとはしていない場合がほとんどです。実のところ、ゲームの中で展開される架空の物語はあくまで「プレイヤー自身が成長する体験」をデザインするための手段に過ぎません。主人公がどれだけ成長したところで、プレイヤー自身には一切何の影響もありません。 

 

 
プレイヤーの成長を促すのに3つのモチーフがあります。
 
1つ目は、収集と反復のモチーフです。架空の物語の中に穴を設けたり全体観を見せたりすることで、収集と反復、そして成長というプレイヤーの物語を自然に導いているわけです。
 
2つ目は、選択と裁量のモチーフです。例えばスーパーマリオではBボタンを押しながら移動すると、倍速で走って移動できます。
歩いて冒険すると落ち着いてアイテムにも敵にも対処できるが、時間がかかる。
一方で、走って冒険すると、素早い操作を要求されるが、速くて気持ちが良い。
これはローリスク・ローリターンと、ハイリスク・ハイリターンをプレイヤーに選択させているのです。同時にプレイヤー自身が自分でゲームの難易度を調整できるようにしています。自分で難易度を調整できるようにすることも、成長には欠かせない要素です。
 
3つ目が翻意と共感のモチーフです。物語には、大抵面倒で迷惑をかける同行者が登場します。同行者は主人公に問題を供給し続ける宿命をおっています。
 
それにより、プレイヤーと主人公がお互い同様に、同行者にイライラするという感情を持ちます。つまり気持ちの向きが見事に揃います。プレイヤーは、主人公の気持ちを他人事ではなく、自分事として捉えます。
共感を通した成長とは、憎しみを克服することを指すのです。その成長をプレイヤーにもたらすために、同行者は面倒な存在として登場しなければならないのです。では、そんな同行者をどうすれば好きになれるのでしょうか。
 
それには同行者を死や絶望の瀬戸際まで追い込めばいいのです。面倒だった同行者が窮地に追い込まれた時、プレイヤー、そして主人公は同行者に同情し、好感を持ちます。それにより憎しみを越えて共感することができるように成長します。

  

 
例えばポケモンでも、図鑑があることにより、全体像を把握でき、そしてその時間の中でどこまで自分が獲得できているか可視化されることで、やる気につながります。友達と比べることも容易になります。初期であれば151種類ある中でも、その収集の難易度が大きく異なり、すぐに見つけられるものもいれば、とても頑張らないと見つけられないものもいます。それが誰もが楽しめるような難易度という工夫につながっているのです。
また、共感を通した成長という点では、ポケモンにおけるロケット団や、アンパンマンにおけるバイキンマンドラえもんにおけるジャイアンスネ夫、が挙げられると思います。いずれも邪魔ばかりして、見ているほうも、おそらく主人公も憎しみを持っていますが、たまに彼らがピンチになるとそれは共感に変わっていきます。
 
つまり自分自身が、憎しみから共感へと感情を成長させることができるのです。 
 
 

ジョセフ・キャンベルの英雄の旅に沿う

神話学の巨人ジョセフ・キャンベルは、世界に数多存在する神を分析し、あらゆる神話に共通する型の存在を示唆しました。
天命を知り、決意をして旅に出て、境界を越え、仲間と出会う。最大の試練に立ち向かい、変容・成長し、試練を達成する。そして家に帰る。

 

ゲームにおいても、映画においても、この構成を踏襲するストーリーが多いです。スターウォーズバック・トゥ・ザ・フューチャーなど。
 
ゲームの中には、エンディングの最後にスタート地点に舞い戻るという構成があります。ではなぜ物語はスタート地点で終わらなければならないのでしょうか?
それは、プレイヤー自身が自分の成長を感じるためです。スタート地点に戻すことによって、その物語を通り抜ける前の自分を思い出させ、ひいては体験を通り抜ける前後の自分を比べさせているのです。

 

「あなたはゲームを通して変わりましたか?」と聞く代わりに、自分でそれを思い出せるように始まりの場所に戻す、という工夫がなされているんですね。
 

強く感情が動いたエピソードは記憶に残る

人は、どんなエピソード記憶を長く保存するのでしょうか。
 
それは強く感情が動いたかどうかで決まります。「体験→感情→記憶」という流れが、常に私たちの人生を突き動かしています。
 
つまり、すでにあなたの記憶の中にある体験はあなた自身の感情を動かした体験のはずです。自分自身の感情を確かに突き動かした体験、つまり自分の記憶を確かな土台として、無数の人々の心を動かす体験をデザインしていけばいいのです。
 
 

効果的にプレゼンをするために、定期的にタブーのモチーフを挟み込め

プレゼンターはプレゼン内容を最後まで聞いてもらうことに絶対の責任を負っています。そのためには、聞き手の注意を引くことも仕事のうち。ここはひとつプロ意識を持って、タブーのモチーフを挿入してみてください。
特に効果があるのが、黙ること。プレゼンの大前提である、プレゼンターは話すものだ、という思い込みを覆すことで一気に注目を集められます。
 
聞く相手に予想を当てさせ、時に外させて集中をキープしてもらいます。
 
ここで、とどめにもう一つ体験デザインを施します。
プレゼンという体験をくぐり抜けたことで、聞き手が成長したことを実感させるための体験デザインです。プレゼンを聞く前には理解できなかったことが、プレゼンを聞いた後で理解できるようになっている。そんな成長の実感を聞き手に与えるために、メインの主張や問い、全体のまとめを冒頭に示し、そして最後にも再提示します。

 

 
 

子育てに体験デザインを応用する

子供は素直で純粋です。
 
 子供が片付けない
 歯磨きしない
 本を読んでも聞かない
 
という場合、子供が悪いのではなく親の命令や指示が悪いことになります。そもそも言葉による命令1つで子供を動かそうとしていること自体が甘かったのです。そこで、体験デザインが使えるはずだと思いました。
 
 これ、どこに置けばいい?と尋ねる
 歯ブラシの柄の方で磨いてみせる
 「知らなかった」と感心しながら読む
 
例えば片付けについて。子供たちの片付けを観察すると、大人から見ればどれも同じように見えるおもちゃが、すぐに片付けるおもちゃと、いつまでたっても片付けられないおもちゃにグループ分けされることに気づきました。
つまり子供はおもちゃを片付ける場所を記憶していない時があるという事だったのです。なので、どこにおけばいい?と尋ねるだけで、片付ける場所を知っているおもちゃは「あそこだよ」と言いながら片付けてくれます。一方、もし場所を思い出せなければ、こちらからヒントを出せばいいのです。
 
本を読む時も同じです。読んでいる親が本の中身をつまらないと思いながら読んでいたら、子供にそれが伝わります。裏を返せば、子供は親が喜ぶことを喜んでくれていたのです。そこで、親である自分が読んだことのない本や知らないことが書いてある図鑑などを準備して自分自身も楽しみながら読むようにしました。

 

体験デザインは相手の感情を読み取り、自然と、そっと押すような形でフォローする設計をする、ということだと思います。行動経済学のNudgeの実現のために体験デザインが重要になります。
 
例えば申込用紙や何らかの申請書類(指定フォーマットにうんざりする経験はありますよね...)、プレゼン、子供との接し方など、幅広い範囲でデザインが求められています。
一人でも多くの方が体験をデザインする重要さに気づき、少しずつ実践していければより暮らしやすい世界が待っていると思うのです。