必読!おすすめビジネス書のご紹介

ビジネス書、何を読むべきか悩みますよね。ランキング上位を買ってみても、案外学びにならなかったり。そんな思いから、おすすめの本の概要を書くことにしました。外資系戦略コンサルなどで勤務した私が、おすすめの本をご紹介します!参考になれば幸いです!

戦略プロフェッショナル(三枝匡)

以前、三枝さんの「V字回復経営」をご紹介しましたが、戦略三部作の中の別の著書のご紹介です。

これも、ストーリーに沿って(実話をもとにした!)書かれており、ビジネス書が苦手な方でも読みやすい仕上がりになっています。

しかし、内容は超一流。社会人になったばかりの方へもおすすめです。ネタバレになるので、小説風の部分は全く記載しておりませんが、ビジネス的に学びになることを抜粋記載しております。よろしければお読みください。

 

戦略プロフェッショナル[増補改訂版]

 
 
会社を立て直す際、幹部社員の素直さは成功を大きく左右する。
過去に改革失敗の痛みを経験している企業では、新たな改革者の登場に対して斜に構える人が多い。彼らを追い詰めれば、組織の政治性がうごめき始める。
一方、過去のネガティブ経験が少ない会社では、社員は不安を感じつつも概して素直である。チャンスが来た、と前向きにとらえることも多い。社員は、正しい、正しくない、の議論に従いとにかくやってみよう、となる。その雰囲気が政治性を封じ込める。
 
では、戦略プロフェッショナルを目指すあなたが、政治性の高い組織で働く場合の対処法は何か。
まず、自分も政治性で対抗したら同じ穴のムジナになってしまう。頼りになる武器は、あくまで戦略的手法が生み出す力だ。客観的事実、抵抗者がぐうの音も出ないデータの裏付け、明快な論理、正直で裏のない会話、社内よりも、競合と顧客の論理などに徹することが重要である。

 

 
 
競合ポジションの仮説を立てるために
概括的にイメージをつかむためには、2つのチャートを頭の中に描く。
第一のチャートは、プロダクトライフサイクルだ。なぜそれが重要かと言えば、事業や製品がプロダクトライフサイクルの段階を進むにつれて市場での競争の形態が変化していき、そこで競争に打ち勝つカギも移行していくからだ。
市場が導入期や成長期の初期にあれば、外部からの参入は容易である。自分にとっても相手にとっても容易である。この時期は製品内容による有意差がカギである。製品の信頼性が確立していないこの段階で価格差を強調しても、その効果には限りがある。
やがて成長期に入ってどこの企業も似たものを出せるようになると、営業体制やアフターサービスもなど、いわゆる面展開での蓄積に勝負の決め手が移る。
そしてその先には価格差による戦いが待っている。サービスを提供することによって価格競争から逃れようとしても、この段階では限界がある。売値を下げ、コストを下げる競争である。そのためには販売量を増やさなければならず、ますます競争は量的拡大の競争に移っていく。それは資金量の戦いである。
ライフサイクルの最終段階では複合的優位性が支配する。この段階でマーケットシェアはほとんど固定する。新しい優位性を打ち出す余裕は少なく互いにも攻めどころがない。
第二のチャートは、その企業の事業の成長ルートである。事業の成長率と競合ポジションでマトリックスを取り、勝ち筋に乗っているかを判断する。
ルート1の企業では、自分たちは競合にいつ負けてしまうかとピリピリしている。逆にルート3の企業では社内の不平不満は内向していて、お客の話題ではなく社内の人間に対する話題で一杯である。不満分子はやめてしまった後で、残っている社員はただ会社に来て、言われたことをやっているだけのことが多い。
ルート3の企業では、商品の原価計算ができていないことが多い。
ルート1の企業では何かを決定するときに関与する人間の数が少ない。ルート3ではあちこちに話を持って回り時間がかかる。
ルート3企業は、社内の危機感が弱く、組織としても低いレベルで「安定」していることが多い。そんな企業のトップになっても、お説教したり社員とコミニケーションをとっても何も起きない。会社を良くしようと思ったら、バランス状態を戦略的に突き崩すしかない。よくも悪くも社内をぐらつかせるような積極的な手を次々と打ち出していかなければならない。トップの役割はこの組織のアンバランス化である。
会社を強くするためには組織の適度な不安定化が常に必要である。

 

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事業の成長ルート
 
 
会社を立て直すために、主人公の広川が通ってきた検討のプロセス
下記の順に検討を進め、実行していきました。
 
1.仕事の優先度を決める
どの事業部の改善に優先的に取り組むか全社的な視点から確認をした
 
2.全体市場の俯瞰
その製品の全体市場を概括的につかんだ。結果として、この市場は成長市場であり、まだ大きな競合はいないので、のし上がるチャンスがあると見た。
 
3.戦略製品の抽出
市場をさらに製品別に分け、成長商品とダメ商品を明確に認識した。その作業から、今後の事業部の戦略展開は製品群Aにかかっており、それもジュピター製品の拡販がカギであると結論した。そのためにプロダクトライフサイクルと市場シェアの情報を整理した。
 
4.製品の差別化能力の確認
3と並行して、自社のジュピターが競合優位性を持つ製品であることを確認した。逆に言えば、売れていない理由は製品ではなく他にあると見た。
 
5.価格と利益構造のチェック
競合と比較してジュピターのこの1年間の価格も、売るための障害になっていないと結論した。 そのため、価格自体ではないところ問題はありそうだ。
 
6.戦略ロジックの策定
ユーザを訪問し、戦略展開のネックが何かを模索した。競合の販売の仕方を探り、価格自体はネックではなく、その販売の仕方がネックであると把握した。
 
7.組織の強みと弱みを把握
次にこだわった問題点は、営業からユーザへのアクセスが弱いと言うことであった。それは質の問題ではなく、士気が低いことが問題であるとわかった。そのために、代理店方式から直販体制にするという大変更を行うことにした。
 
8.市場のターゲットを絞る
全国の販売先総数が1000カ所位であり、それぞれをセグメンテーションして攻める先を決めた。
 
9.戦略展開の時間軸の決定
競合動向を予測しながら、残された時間を算定し逆算してやるべきことを決めていった
 
10.価値観の混乱化
自分である程度の戦略を策定し終わった段階で、それを部下にぶつけていくプロセスを始めた。それは従来のやり方を否定し、価値観をひっくり返すことが組織を新しい戦略に収束していくための第一歩になるからである。しかしこれは同時にリーダーの立場が最も危険になる時期でもある。経営トップと連絡を密にしながら、不協和音を共同でつぶしていくことが必要になる。裏から刺されやすい時期。
 
11.新戦略と実行プログラム
社内の揺らぐ価値観をまとめながら新戦略を組み、それを具体的な実行プログラムに落とす。その際、社員の士気が高くなるように、近いタイミングで成功を見えるようにするように計画する。
 
 
 
 
セグメンテーションとその徹底活用の重要性

顧客セグメンテーションは営業戦略を策定する上でとても重要となる。そして、そのセグメンテーションを信じ、営業戦略を着実に実行することがさらに重要となる。

営業先を決める時、セグメンテーションを行い顧客を6つのセグメントに分けた。そして優先度を決め、優先度1へのアタックが全て終わるまでは、他の顧客に絶対にアプローチをしない、というルールを決めた。もちろん既存顧客からの問い合わせには対応するものの、こちらからアプローチをするのはセグメントの順番に必ず従う。そうしないと、人は易きに流れ、行きやすい顧客に行ってしまいがちになるからである。
 
営業の後方支援のための仕組みも合わせて準備
営業の状況の管理には、日報などの面倒なものを廃止し、各ターゲット先ごとに営業進捗状況図を作成することにした。営業マンの手間は、入手した情報を書き込んでいくだけなのでとても簡単である。
そしてフェーズごとにランクをつけることによって、支店内での管理も容易になる。ランクが横ばいになっている営業先について、その視点と状況を確認すれば良くなる。また、そのランクを集計することで、全国的な状況の把握も容易になった。
そしてこれを導入したことにより、売り上げになる前のプロセスを評価できるようになった。それにより営業担当間での情報の透明性が高まった。
 
営業の際には、販促ツールを入念に準備した。特に提案書については、ユーザの組織の中で回覧され、あるいは何回もコピーされどこに行ってもこちらの筋書き通りの説明が繰り返された。一人歩きをする営業マンとして大きく活躍した。
 
 
その他、三枝さんのコメントより。
戦略を作る際に、その会社の組織能力に見合ったものであるか、ということを常に考える。いかに良い計画を作っても、その組織が実行できなければかえって有害になってしまうからである。
 
人を1番成長させるのは、困難や修羅場の経験である。それが修羅場で経験者人材の育成が加速されるメカニズムである。しかし実は、困難に直面しなくても因果律の習得を早める方法もある。
それは失敗の疑似体験である。あらかじめ考え抜くことをしてから行動を起こすことで、たとえ他人から見たら失敗ではない行動も、本人からしたら自分のシナリオと異なる状況が生まれることにより、学びが生まれる。頭の中でその原因追求と反省を繰り返すことができる。

 

危機感を持ちなさいとトップが社員に対して言うのは失格である。社員が自分の仕事を行う中で自ら反省し、危機感を感じないと何も変わらない。
適切に権限を委譲し、社員が自分の仕事に責任感を持てば、自然と危機感を身に付けるようになる。そして成長する。ミスミでは、各事業チームがビジネスプランを作り、それを上司、それから社長と議論を重ねる。ビジネスプランが承認されると、チームのディレクターは「自分の戦略の実行に責任を持つ」というコミットメントレターにサインをし、社長は「それを支援する」と約束する文章にサインをする。それは社長から社員までが同じ船に乗るための儀式であり、同時に権限委譲にもなっている。

 

雑な抜粋ですみません。。。
組織を立て直すとき、自分ひとりでは出来ません。仲間を作り、意思を広め、信頼を勝ち取っていく。その中で組織が成長していくのだと思います。その意味で、自分がこの立場だったらここまでうまくやりきる自信はないですが、少なくとも追体験するイメージを持つことはできました。
失敗も、成功も疑似体験しながら、強いビジネスマンになっていきたいと思います。
 
ありがとうございました!
 

 

以前記載した記事はこちらです。

 

taki4tbm.hatenablog.com