Measure What Matters(ジョン・ドーア)
OKR、それは変化の早い現代において、会社の方向を一つに揃える協力なツールです。それを数々のスタートアップに紹介し、浸透させてきた筆者の経験と学び、そして導入した企業のトップのインタビュー事例が詰まった教科書です。
日本の大企業がいきなりこれで変わるというのは難しいと思う一方で、アドビは2012年からそれを導入、変革を成功させたというので、不可能ではないな、と思います。
下記のホームページでも色々学べますし動画での紹介もあるのでご参考です。
まず、OKRの4つの威力から。
- 優先事項にフォーカスし、コミットする
- アラインメントと連携がチームワークを生む
- 進捗をトラッキングし、責任を明確にする
- 驚異的成果に向けてストレッチする
OKRの基本ルール
OKRで何より重要なのは、最上位の目標は「重要なもの」でなければならないということだ。特別な注意を払うべき目標を厳選し、今すぐに全員が動き出すための手段である。それは会社が達成すべきもっと大きな目標と結びついている。
「KR(主要な結果)」は簡潔で、具体的で、測定可能であること。アウトプットとインプットを組み合わせることが有用であること。最後に、すべての「主要な結果」を完了すれば、必ず目標は達成される。さもなければそれはOKRとは言えない。
「優れた経営とは、一見重要度が同じような数多くの活動の中から、圧倒的に影響力の大きいものを1つか2つ選び、そこに集中する能力にほかならない。」とアンディ・グローブは言う。
ラリー・ペイジは「勝利する組織は少ない矢を全身全霊で射つ」と表現する。OKRにはその威力がある。
OKRは常に仕掛中のプロセス
「最善を善の敵にしてはならない。」OKRはサイクルの途中で修正したり、場合によっては破棄することも可能だということを忘れないでほしい。ときには「正しい」「主要な結果(KR)」が、目標を設定した数週間後、あるいは数カ月後に初めて見えてくることもある。OKRは石碑に刻まれた戒律のようなものではなく、常に仕掛中のプロセスだ。
OKRの組織への導入は時間がかかる。
ヌナではいきなり20名の全社員に広げた結果、個人のOKRを設定しない人もいれば、設定しても引き出しにしまったままのひともいた。まずは幹部からはじめ、幹部が心から信頼したあとに全社員に広げるべきだった。それにより幹部のサポートを得ることができれば浸透も早い。
OKRにより部門の垣根を超えた水平的連携が可能になる
透明性のあるOKRは部門の垣根を超えた水平的連携を可能にする。他の部門のOKRも公開されていれば、どの部門にいても他のどの部門が何を目指して進行しているかがわかる。そのためどこで協力すべきかということもわかる。しかもそれに要するマネジメントの負担はゼロ。素晴らしい仕組みだ。
OKR評点と自己評価は一様ではない。
グーグルの社員はパフォーマンスの自己評価をする際、OKRをそのまま評点として使うのではなく、あくまでも参考とするように勧められている。ショーナ・ブラウンは「結果が赤、黄色、あるいは青だったということが重要なのではない。OKRは社員が通常業務に加えて、会社全体の目標と関連することをどれだかやったか、を記録するものだ」という。つまるところ、OKRの意義は(評価することではなく)全員をやるべき仕事に向かわせることにある。
振り返りが重要
OKRは本来、行動を重視する。しかしやみくもに行動するだけでは、回し車のハムスターと変わらず、単なる苦行になってしまう。充足感を得るために鍵となるのは、野心的な目標を立て、そのほとんどを達成し、足を止めてそれを振り返り、そのうえで新たなサイクルを繰り返すことだ。
ハーバード・ビジネス・レビューの研究によると「直接的経験からの学びは、振り返りと組み合わせると更に効果が高まる。振り返りとは、経験で得られた主要な教訓と統合し、抽象化し、言語化することだ」という結果が出ている。 ジョン・デューイはさらに踏み込み、「われわれは経験からは学習しない。経験を振り返ることで学習するのだ」と述べた。
ーーOKRサイクルの締めくくりに、振り返るべき点ーー
- 目標は全て達成したか。そうだとすれば成功要因はなにか?
- 達成しなかった場合、どのような障害があったのか
- 完全に達成できた目標を書き直すとしたら、どこを変えるか。
- つぎのOKRサイクルへの取り組み方を変えるような学びは合ったか
OKRとマッチするマネジメントは継続的パフォーマンス管理「CFR」
四半期OKRによって、形式的な年間目標が過去の遺物となるのと同じように、時代遅れのパフォーマンス管理システムにも抜本的改革が必要。それが、継続的パフォーマンス管理であり、それを実践する手段が「CFR」である。
- Conversation 対話 パフォーマンス向上を目的に、マネージャーとコントリビューターの間で行われる紳士で深みのある意見交換
- Feedback フィードバック プロセスを評価し、将来の改善につなげるための、同僚との双方向あるいはネットワーク型のコミュニケーション
- Recognition 承認(感謝) 大小さまざまな貢献に対して、然るべき個人に感謝を伝える
CFRは本当に重要なことを測定する文化を、組織の隅々まで浸透させるシステムだ。「目標は設定時に想定したものより困難なものだったのか」「そもそも、正しい目標だったのか」「意欲を引き出すものか」このような重要な問いと向き合うには継続的パフォーマンス管理が必要だ。それを通じて、その答えを組織全体から吸い上げねばならない。
継続的パフォーマンス管理では、今までの年次管理と異なり、随時フィードバックを行い(フィードバックすべき案件があればすぐに行ったほうが良い)、報酬とは切り離して考え、結果ではなくプロセスに、弱みではなく強みに着目し、そして事実ベースでフィードバックすることが重要となる。
部下が今苦戦しているのに、フィードバックが年末になればその間部下のパフォーマンスは落ちる。そのため、継続的フィードバックを導入することで全ての社員のパフォーマンスは向上するだろう。
ーー 例)パクトという非営利団体 ーー
OKRを導入した時点で、従来の年一回の勤務評定は正式に廃止し、その代わりにマネージャーと従業員の面談の頻度を高めた。組織内ではこの仕組みを「プロペル」と呼んでおり、4つの構成要素から成る。
1つ目は、従業員がマネージャーと業務の状況について話し合うために、月一回実施する1対1の面談。
2つ目はOKRに対する進捗を評価するための4半期レビュー。ミーティングでは下記を話し合う。 「今四半期で達成しようとしていた目標はなにか」 「達成できたことはなにか」 「達成できなかったことはなにか」 「その理由はなにか」 「何を変えればよいか」
3つ目は半年に一度開く、キャリア開発のための対話。従業員はそれまで何をしてきたか、今はどういう状況で、今後はどうなりたいのか、といった個人的なキャリアの展望を議論する。
4つ目は継続的かつ自発的な振り返りだ。例えば「先程のプレゼンは良かったよ」と言われたときに、一歩踏み込んで、「ありがとうございます。良かった点を一つ挙げていただけませんか?」と言うことで、リアルタイムに具体的なフィードバックをもらえる ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
目標管理MTGでは、未来志向の問いが行われる。
- いま、何に取り組んでいるのか
- OKRの進捗は?
- 業務の妨げとなっていることはあるか?
- もっと成果を上げるために、上司ができることはあるか?
- あなたのキャリア目標を達成するためには、どのように成長する必要があるのか
OKRと報酬を切り離す
継続的パフォーマンス管理導入の第一歩は、OKRを報酬(昇給とボーナス)と切り離すことである。(完全に切り離すという意味ではなく、報酬決定のためにOKRが使われるということがないようにすべきという意味)
報酬は勤務評定で行い、それは年末におこなう。一方で目標管理は継続的な未来志向の話し合いであり、より高い頻度で行う。
Googleのラズロ・ボックによると、GoogleではOKRが評定に占める割合は3分の1以下だという。それよりも、部門横断的チームからのフィードバックや、その人物の置かれた状況が重視される。Googleでは意識的に目標の評価結果を報酬の決定と切り離す。サイクルが終わるたびにOKRの評点をシステムから消去するほどだ。
「たとえ目標管理システムが合っても、目標そのものが間違っている可能性は常にある。市場でとんでもないことが起こったり、得意客が仕事をやめてしまったり。そうした事柄を全て考慮に入れなければならない」
フィードバック
シェリル・サンドバーグによると、
「フィードバックとは、観察と経験に基づく他者の意見であり、自分が他者にどんな印象を与えているかを教えてくれるもの」
そして、
「今日の労働者は何をすべきか命令されるのではなく、エンパワーメントとインスピレーション(知的刺激)を望んでいる。マネージャーからフィードバックが来るのを待つのではなく、自分からマネージャーへフィードバックを返したいと望んでいる。定期的にマネージャーと目標を議論し、仲間とそれを共有し、互いに進捗をトラッキングしたいと考えている」
OKRのメリットを最大限に引き出すには、そのプロセスの中にフィードバックを組み込んでおかなければならない。自分の仕事ぶりがどの程度かわからなければ、改善できるわけがない。そして、透明性のあるOKRにし、他部門からのフィードバック・質問を受け入れるようにすべきである。
とくに、ピアフィードバックはチーム間のつながりを醸成するので、特に有用である。OKRは360度評価を促すので、組織内の縦割りはすぐに無くなるだろう。
承認
ありがとう、と口に出して言うのは、チームのエンゲージメントを高める最高の手段である。継続的に社員を承認する企業は、そうでない企業と比べて社員の自発的退社が31%少ないというデータがある。
継続的承認を実践する方法はいくつかある。
- 同僚間の承認を制度化する 従業員の成果を、常に仲間である同僚が認めるようになると、感謝の文化が生まれる。ズームピザでは金曜日の会議の最後に、各自が素晴らしい成果を上げたと思う社員の名前を自由に叫ぶ。
- 明確な基準を設ける。 特別なプロジェクト、会社の目標の達成、会社の理念を体現する行為など、従業員の行動や成果を認める。「今月の従業員」ではなく「今月の成果」を表彰する。
- 承認事例を共有する ニュースレターや会社のブログで、優れた成果の背景を説明し、承認の理由を明確にする
- 承認の頻度を高め、手の届くものにする。 ちょっとした成果も認める。期限に間に合わせるための懸命な努力、提案への一工夫など、マネージャーが当たり前と思いがちな小さな事を取り上げる。とある営業マンがとある顧客に提案した内容のシェアなどもいいかも。
アドビでは定期的な面談「チェックイン」によりOKRを浸透させた
アドビでは継続的パフォーマンス管理プロセスとして「チェックイン」を導入した。
チェックインには最低限のルールしかなく、トラッキングや書類作成は行わない。重視している分野は3つあり、四半期ごとのOKR、定期的フィードバック、キャリア開発と成長、だ。毎年何度もチェックイン対話を実施する。
チェックインが導入された2012年以降、アドビの自主退職は大幅に減少した。
年間を通じて、自ら定期的なチェックインの予定を入れることで、前回の対話以降、課題や目標に対してどれだけ進捗したのか、マネージャーに常に知らせておくことができるようになった。公式には6週間に1回以上としているが、実際はほとんどの人が週に1回のチェックインを行っている。
導入時は、チェックインがどのようなものか、30~60分のウェブトレーニング会議を何度か開催した。最初は幹部、続いてマネージャー、最後に従業員に発展した。そして四半期ごとに、それぞれのフェーズで行うべきチェックインの内容を説明していった。
また、建設的なフィードバックをするためのスキルを身につけるための動画などの投資も行った。
サービス業にとって何より重要なのは、自分には成果を出せるという自信と、この会社で働きたいという意欲を持った従業員だ。社員流出のコストは大きい。望ましい流出は、キャリア開発の一環として社内で異動することだ。
ひとは転職したいわけではなく、自分が本当に価値のある仕事をできる場所を見つけたいだけだ。
アドビではチェックインがそれを実現しようとしている。
ズームピザではOKRにより本当に重要なことを達成する
マネージャーは仕事で壁にぶつかると、もっと頑張って働くこうと考える。しかし、マネージャーが実際にすべき事は、その直感とは逆である。 しばし足を止め、雑音をシャットアウトするのだ。目の前の事態を本当に見るためにあえて目を閉じる。それから組織のニーズを踏まえて、自分とチームにとって最善の道を選ぶ。
OKRが優れているのは、振り返りが正式なプロセスの一部となっている事だ。少なくとも四半期に一度は、コントリビューターは静かな場所で落ち着いて、自分の判断が会社の方針と一致しているか考えることを求められる。彼らは大きな視点から物事を考えるようになる。 そうした経験を重ねる中で、マネージャーらしい思考をする準備ができるようになる。
スタートアップ企業ではそれはとても重要である。会社が突然大きくなる中で、人々がマネージャーになる準備が追いつかないのだ。そのため、OKRにより人を育てることができることは素晴らしい。
OKRを全体に導入する前に、まず半年にわたり幹部だけで実践してみた。まずは文化を構築する必要があったからだ。当初は懐疑的であった人も、2週間に一度の数分の定期チェックにより、自分がしていることについて、またそれが四半期の会社の目標とどう一致しているかについて確認することができたため、応援派にまわっていった。
OKRは、各自が目指すことを明文化させることができる。それにより意識の差がなくなっていき、数少ないリソースを同じ方向に集中させることができた。
ルメリスではOKR導入前に文化の変革が必要だった
ルメリスでは、社内政治が多く、部門間の対立も大きかった。OKRを導入したあとも、浸透したり活用されたりなかなかしなかった。新プロセスの導入前に、まずは社内文化の立て直しが必要であった。
そのために、 高圧的な態度をとる社員に退社してもらい、かつ退社する際に反感を持たれないように、最大限の配慮をした。また、文化に関する会議では、経営陣が言う文化と実際の行動が違う場合、それを教えてほしいと、人事から何度も伝えた。結局3カ月間、社員の行動は変わらなかったが、CEO自身がグループランチを開き、「互いに責任を押し付け合うような職場で働きたい人間などいない」と語ったことが転換点となり、多くの人が変化を信じ始めた。
そしてある程度文化の立て直しが済んだ後で、OKRを再度導入した。その際は、一部門を対象としたパイロットプログラムからスタートした。その際、その部門のトップを務めるVPが各社員の設定したOKRに細かいフィードバックを行った。
「なぜこの目標はこの書きぶりにしたんですか?」
「この指標は測定可能ですか?」
「このOKRは理解できません。顧客は違うことを言っているのでは?」
それによりVPはOKRに高い関心を持っている。もっと真剣に取り組んだほうが良いな。と言う意識が社員に広がり、OKRは広がっていった。
そして、一度きちんと運用が始まると、90%以上の社員がマネージャーから何を期待されているかがわかった、などと好意的な反応をした。
全社員に運用を広げる前には、人事部門がマネージャー全員とグループワーク及び1対1の会話を行い、 いかにOKRを設定し、フィードバックを行っていくかを、細かく説明し疑問を解消していった。それにより社員へのOKRの浸透は第1四半期から75%に達した。社員定着率にも好ましい変化がすぐに現れた。
面白いのは経営会議でのやりとりである。10人ほどの上級幹部がそれぞれのOKRの項目を説明していく。その場で、うまくいっていない赤いランプがついた分を各幹部は徹底的に説明をする。そしてどのチームの赤を「買う」かを決め、残りの時間はその事柄について皆で議論し、リソース配分を考える。
積極的にうまくいっていない点をアピールし合うなど以前は考えられなかったことであるが、OKRにより、組織のために働くことが促され、文化が変わっていった。
GoogleのOKR実践マニュアル
優れたOKRのためのシンプルなルール
【目標=何を】
- ゴールと意図を表す
- 野心的だが、現実的
- 具体的、客観的で曖昧さがない。合理的なオブザーバーから見て、目標が達成されたか否か、が明確でなければならない。
- 目標の達成は、Googleに明確な価値をもたらす
【主要な結果=どのように】
- 測定可能なマイルストーン。それを達成することが、目標達成につながる。
- 活動ではなく、成果を書く。「相談する」「分析する」「参加する」などは活動である。そうではなく、そうした活動がエンドユーザーにもたらす影響を書く。例えば「平均レイテンシーの測定値を公表する」と書く。
- 完了のエビデンスを明記する。このエビデンスは入手可能で信頼性があり、簡単に確認できるものでなくてはならない。
2種類のOKR コミットvs野心的
OKRには2種類あり、両者を区別することが重要である。
コミットするOKRとは、組織として必ず達成すると決め、確実に達成されるようにスケジュールやリソースを積極的に調整するものである。
コミットするOKRに期待される評定は1.0であり、1.0未満であった際には原因を究明する。それは計画か執行に誤りがあったことを示すからだ。
一方、野心的OKRとは、我々が実現したい世界を描くものだ。どうすればそこに到達できるのか、そのOKRを達成するのにどのくらいのリソースが必要化、まるでわからなくても構わない。野心的OKRに期待される平均評定は0.7だが、変動幅は大きい。
OKRを作成する際の落とし穴
①コミットするOKRと野心的OKRを区別できない。
②通常業務をOKRとする
チームが、現在のやり方を一切変えずに達成できそうなことをOKRにすることも多い。
③弱気な野心的OKR
野心的OKRを現状を起点にしては良くない。むしろ「もし成約がほとんどなかったら、数年後、我々や顧客の世界はどうかわっているだろうか」と考える。野心的なので達成は難しいが、明文化しなければ絶対に達成することはできない。
④力の出し惜しみ
チームが人員や資金の全てを費やさずにすべてのOKRを達成できる場合、チームが限界に挑戦していないと言える。これは経営上層部からみると、人員やリソースを再配分すべきだというサインになる。
⑤価値の低いOKRになる
OKRは明確な事業価値を約束するものでなければならない。そうでなければ。そのためにリソースを割く理由がない。価値の低いOKRとは、たとえ1.0の評定でも、誰も気づかない、あるいは気にしないものである。
⑥コミットする目標に対して、「主要な結果KR」が不十分
OKRは望ましい成果(O)と、その成果を達成するのに必要な測定可能なステップ(KR)に分かれる。すべてのKRで1.0の評定が得られれば目標も1.0が得られるようにKRを作成することが重要。
OKRの実行
コミットするOKRで1.0を達成できそうにないチームは、速やかに上申しなければならない。これは重要なポイントである。上申によりチームを管理する立場にある人々が、対策を検討し対立を解決することができるため、上申は必須である。
コミットするOKRを達成したあとに残された時間を使い、野心的OKRの中で優先順位の高いOKRから順番に取り組んでいく。
野心的OKRと関連する優先事項は、完了するまでチームのOKRリストに残し、必要ならば次の四半期へと引き継いでいく。進捗がないからといってリストから削除するのは間違いである。むしろ、リソース配分の方法や解決策の欠如などという根深い問題に気づくチャンスである。
追加のリトマステスト
- そのOKRを書くのに5分もかからなかったら、おそらく良いものではない。じっくり考えよう。
- 目標は一行に収まるくらい簡潔にする
- KRにチーム内でしか通用しない用語が含まれていたらよくない。
- 指標に曖昧さがないこと。「ユーザー100万人」ではDAUか7日平均のユーザーなのか、わからない。
- OKRに含まれていないが、チームにとって重要な活動があれば、OKRを追加する
- 規模が大きい組織ではOKRを階層式にする。チーム全体へのハイレベルなOKRと、サブチームごとのより詳細なOKRだ。
OKRを話し合う
目標の計画と振り返りを円滑に行うため、マネージャーはコントリビューターに次のように問いかける
・君の職務のため、チームのため、会社のために最大の価値を生み出すには、どのOKRにフォーカスすべきと思う?
・ここに挙げたOKRのうち、組織の主要な取り組みと方向性が一致しているのはどれだろう?
進捗確認においてはこのような問いを投げかける。
・君のOKRの進み具合はどうだい?
・OKRの達成に欠かせない能力はどんなものだろう?
・目標達成を阻害する要因はある?
・優先事項の変化を受けて、修正、追加、削除が必要なOKRはある?
マネージャー主導のコーチングとして以下の問いを検討しておく。
・私が部下に期待する行動や価値観とはどのようなものか
・私が部下に新たに身に着けてほしい、あるいはやめてほしい行動や価値観とはどのようなものか
・部下の能力を最大限引き出すために、私はどんなコーチングをすべきか
・君の任務でどこか変えたいところはある?
一方で部下から上司にフィードバックを求めるためにこのような問いかけが良い。
・私はなにか君の役に立つことができているかな?
・君が能力を発揮するのを、私が妨げている部分はある?また、もっと能力を発揮するために私ができることはありますか?
OKRの導入に向けて
- 組織に適したOKRのサイクルを設定する。筆者は四半期のOKR(短期的目標)と年間のOKR(長期目標と結びついたもの)を並行して使うダブルトラック方式を推奨する。
- OKRは段階的に、まずは経営上層部から導入する。試験期間で、実施する上での問題点を解決し、またリーダー層のコミットメントを強める。
- OKRが成功する上で最も重要な要素は、組織のリーダーがそれを信じ、支持すること
- OKRを導入する前に、解決すべき文化的障害がないか、とくに説明責任と信頼の面で組織に問題がないか、注意する。
- OKR導入後は、OKRの番人を任命し、すべての個人が最適なOを選ぶことに目を光らせる。その番人が先導し、定期的なOKRの確認と、進捗報告を徹底させる。頻繁な状況確認によって、チームも個人も機敏に軌道修正したり速く失敗できるようになる。
- 1サイクル辺り3〜5個の全体目標(絶対に達成すべきこと)にコミットする。OKRに振り向ける能力を増やすため、しないことを決め、それに応じて業務を廃止、延期、縮小する。
- OKRを選ぶ際には、圧倒的なパフォーマンス向上に最も効果のあるものを探す。
- 1つのOに対し、5つ以下の測定可能で曖昧さのない、期限が明確に区切られたKRを決める。それは目標を「どのように」達成するかを示す。すべてのKRが完了されれば、目標が達成されるはずだ。
- バランスを品質管理のため、KRには「質的なもの」と「量的なもの」を組み合わせる。
- 特に注意すべきKRがある場合は、1〜2サイクルの間はそれを目標に昇格させる。
- 社員の目標がどのようにリーダーのビジョンや会社の最優先事項と結びついているかを示す。現場からCEOまでの目標が公開された透明性の高い環境は、優れた経営を実現する近道となる。
- 全社MTGの場で、なぜ組織にとってOKRが重要かを説明する。それを自分でも聞き飽きたと思うくらい、繰り返す。
- OKRの運用において、トップが設定した最上位目標を段階的におろしていく形をとるとき、KRについては最前線のコントリビューターと意見交換をする。イノベーションは会社の端っこで起こりやすい。
- OKRはトップダウンとボトムアップを50:50くらいに比率にするのが望ましい
- OKRを水平的に共有することでチーム同士を結びつけ、部門ごとの縦割りを崩す。
- 高いパフォーマンスを維持するため、コントリビューターとマネージャーの週1回のOKR個人面談と、月一回の部門会議を開くことを奨励する
- 社員が設定したOKRのストレッチが不十分だったら、より飛躍的な破壊的OKRになるように介入する。そしてそれが達成できなかった場合でも、まだ妥当性を失っていなければ次のサイクルでも継続を検討する。
- 協力と責任の明確化によって、最高のパフォーマンスを引き出す。OKRにグループとして取り組む場合、KRを個人に割当て、責任を持って取り組ませる。
- OKRという「触媒」とCFRという「栄養」のバランスを保つ OKRは透明性、明快さ、目的意識、そして全体像を見る姿勢を促すためにある CFRは前向きさ、情熱、ストレッチ思考、そして日々の改善を促すためにある
以上です、長くなってしまいすみませんでした。
いきなり実践は難しいですが、失敗例、成功例を本書から学び、いかしていければと思います。
出典:
Measure What Matters(メジャー・ホワット・マターズ) 伝説のベンチャー投資家がGoogleに教えた成功手法 OKR (日本経済新聞出版)