100日で結果を出すM&A入門(大前研一)
M&Aをどのように成功させるか、大枠を掴みたいときに最適な本だと思います。日本企業が苦手と言われるM&Aですが、下記の要約を見てみても、コミュニケーション、人事制度の面で欧米圏とそもそも考え方が異なるのが日本企業なので、一定苦手なのは仕方ないな、と思ってしまいました。
実務面は書かれていませんが、それが故に大枠をつかみやすいと思います。
M&Aにおいて重要なこと
ジャックウェルチによると、買収をうまく行かせるためには最初の100日で、買収先企業の文化、組織を変えないといけない。それを過ぎると、変えるのはとても大変になり、うまくいかない。
もし、その100日戦争を任せられる人材がいなければ、買収そのものを考え直した方がよい。
シスコシステムズのジョンチェンバースCEOは、買収を決めるかどうか、最後はブレックファーストミーティングで相手との相性を見て判断すると言っていた。
どんなに業績のいい会社であっても、相性が悪くてケミストリーが生まれそうもなければ、彼は絶対にその会社を買わなかったのである。
M&A成功のためには、ノウハウを社内に貯めるべし。
GEや3Mのような会社には、CFOの下にM&Aのノウハウやスキルを蓄積し、個別案件を支援する専門の事業開発チームを設けている。元弁護士、経験豊富な投資銀行出身者やコンサルタント、正確な計算ができるアクチュアリーなどの内外のスタッフをここに置くのである。
また、世界で一番プロジェクトの失敗が少ないと言われているアメリカの建設会社ベクテルでは、一つのプロジェクトが終了すると、プロジェクトマネージャーを務めた人は数ヶ月現場を離れ、プロジェクトのあらゆる記録を文書化する作業に専念する。
ローカルのA社は発注した構造物を作るのにこの発電機を使用した。B社の納期が遅れたのはこういう理由による。C社のDというマネージャーは仕事の段取りがいい。 こういうことをデータでまとめて残しておく。
次に似たプロジェクトを任されたプロジェクトリーダーは、まずこれを読み込むことで何に気をつければ良いのかが瞬時にわかる。だから失敗が減るのだ。
買収先の人事制度や給与体系は、グローバル基準を先に作り、それを買収先の企業に当てはまる。それをしないで個別対応をすると、必ずトラブルが発生する。
現地水準との兼ね合いもあるため、cost of living adjustment を世界で4段階くらい作り、不公平が出ないような制度を目指す。
海外転勤についてはさらに考慮が必要だ。共働きの場合、配偶者が現地で働けるように現地の人材会社と提携しているグローバル企業がほとんどだ。また、子供の学校も考えねばならない。
買収先の経営にはマイクロマネジメントも、放任も良くない。権限移譲は必要だが、その際はKPIを必ず設定すること。そして年に数回レビューをし、これは良く出来ているがこれは出来ていない。来年は直してくれ、のように伝えた上で、ボーナス評価を伝える。いきなり評価結果だけを伝えても海外では誰も納得しない。
トップは時間の15%は人事に費やすくらいでないとマネジメントはできない。
買収にともない、さまざまな例外事項が発生する。
それはつまり、天災や不祥事と言った有事を自ら招いているのに等しい。 マネジメントの原則は、「平時は分散、有事は集中」のため買収はトップが自らの時間をかなり投下し、集中してマネジメントしないとうまくいかない。
特に人事面。統合後の待遇や、統合期間中の待遇、ボーナス。皆のやる気を削がず、会社へのロイヤルティを下げないやり方を探さねばならない。
JTの事例から
海外子会社に権限移譲は必須。動きが遅くなるし、箸の上げ下げまで日本が指示していたら現地のやる気も無くなってしまう。しかし、今度はガバナンスの問題が出てくる。
そこでJTでは、意思決定プロセスを電子化している。出張中でも対応できるし、誰がどの意思決定をしたのかが見える化される。
この良いところは、現地トップの意思決定を、日本のトップが確認できること。実際にするかどうかは別だが、それにより現地のトップに対してもガバナンスが効きやすくなる。
英語でのコミュニケーションは、ミスが起きやすいもの。こちらの伝え方のわかりやすさも、相手の理解度もまちまち。すなわち、グローバル経営では最初から分かり合えると思ってはいけない。前提は、分かり合えない、ということ。根気と体力を使い、氷山の下に隠れている部分を少しずつ明らかにしていく対話力が重要。
すみません、だいぶ簡潔になってしまいました。読みやすいと思ってお許しください..
出典:
大前研一 「100日」で結果を出すM&A入門 ―日本企業への処方箋 (「BBT×プレジデント」エグゼクティブセミナー選書)
以上です!