スタートアップの知財戦略(山本飛翔)
ほかの知財関連の本と重複する部分は割愛して抜粋しました。
出典、事例が豊富にあるため、実務上とても役立つであろう本です。新しいため、最新事例も豊富でした。
商標的使用に当たるか否かの判断要素
過去の裁判例において商標的使用に当たるか否かの判断に当たって考慮されている要素は下記のようなものである。
- 当該商標の使用目的
- 商品等の内容、品質、用途の説明か
- 説明的、技術的な使用か
- キャッチフレーズ、スローガンとしての使用か
- タイトルとしての使用か
- 意匠的、デザイン的な使用か
- 当該商品、役務の性質、種類と当該商標の観念の関連性の強弱
- 当該商標の使用態様
- 文字の書体
- 当該商標が単独の語句かあるいは複数の語句ないし文章の1部として表記されているか
- 当該商標の商品における配置
- 問題となる商標のほかに商標が付されているかどうか
- 別の商標が問題となる使用商標の近くに表示されている、あるいは別の商標が問題となる使用標章よりも大きな字で強調されて表示されているといった事情があれば、需要者は別の商標の方から出所を理解することになりやすく、相対的に問題となる商標の使用については自他商品、役務識別機能を有する使用とはされにくくなる。
- 本来的な識別力があるか否か、著名であるか
- 本来的な識別力が弱い商標(普通名称、一般名称など)を使用する場合は、出所表示機能を果たす態様での使用とはならないことが多い。
ユーグレナの特許戦略
ユーグレナは創業期から知財戦略に積極的に取り組んでいたことで有名であるが、下記のように明確に方針を定めていたとのことである。
製法:リバースエンジニアリングを防止するために、秘匿化
設備:ものによって権利化すべきか否かを検討
用途:すべて特許権を取りに行く
製法については、その工程別に担当者を分け、全体工程を把握している社員を制限するなど、知財以外の部分でも秘匿化に取り組んでいる。
契約による保護は、法律上の保護よりも手厚くなりえる
不正競争防止法上の営業秘密の秘密管理性の要件を、スタートアップが充足する事は難しい。
しかし、契約においてデータ等の秘密保持義務を課しておけば、契約の相手方が秘密保持義務に反して当該データを第三者に開示したときには当該契約相手に対して、秘密保持義務違反を問うことができる。
もちろん、契約の効力が及ぶのは原則として契約当事者間のみである。
SaaSの場合はUIUX面での権利化を中心に据える
クラウドでソフトウェアを提供する場合、被疑侵害者のプロダクトの構成の全てを明らかにする事は容易ではない。
そのため、UIに現れる挙動しか確認できないという前提で、そこから確認または追認できる構成を持って、侵害を立証できるように権利を作り込んでいくことが考えられる。
その際、裁判でいかなる立証手段を用いて、いかに立証していくかの見通しを立てておくことも重要となる。
出典
スタートアップの知財戦略: 事業成長のための知財の活用と戦略法務