必読!おすすめビジネス書のご紹介

ビジネス書、何を読むべきか悩みますよね。ランキング上位を買ってみても、案外学びにならなかったり。そんな思いから、おすすめの本の概要を書くことにしました。外資系戦略コンサルなどで勤務した私が、おすすめの本をご紹介します!参考になれば幸いです!

2022年のリスク トップ10(ユーラシア・グループ)

(なんか、最近はてブロで表示される広告が増えてきた...? これはGoogleのせいなのか..?)

 

本ではないのですが、イアン・ブレマー率いるユーラシア・グループによるTop Risks 2022を簡単にまとめてみたいと思います。

 

下記から無料でフルレポート(と言っても26ページです)が入手可能です。

 

 

 

トップ10リスク

1. No Zero Covid(コロナは無くならない。いかに共存できるか。)

コロナウイルス(Covid-19)はなくなりません。しかし、大半の先進国ではうまく共存していけるのではないか、と述べられています。

 

一方で、途上国ではコロナワクチンが行き渡っていないこと、そしてコロナにより財政が悪化した政府が打ち手を打てず、国民の反発が強まり、現体制派が選挙で負ける、ということも起きています。

また、中国については「ゼロコロナ作戦」で封じ込めてきたわけですが、それがうまくいくのか?という点が気になります。

封じ込めに限界が来ている今、むしろ他国のように共存策を狙っていかねばならないのでは?ただ、共産党習近平トップの2020年からの方針を変えることができるのか?できないならばそのしわ寄せは国民に行き、ますます格差が広がっていくのでは?と書かれています。

コロナは無くならない、という前提で、うまくやっていける国とそうでない国がでてくること、そうでない国が大変な状態になること、それがトップリスクといえます。

 

 

2. テクノロジー中心世界(Technopolar-world)

テック企業が国家よりも力を持つ時代です。

どの情報を見せるか、恣意的に調整することも可能となり、人々の思想も操ることができます。

ウェストファリア条約の後、国家という形が主流になってから400年、人々の生活空間の一部がデジタル上に存在するようになる中でその力関係が変わりつつあります。

GoogleなどのTech企業が国家よりも力を持つ時代が現実化し、もしかしたら国というくくりが見直されるかもしれません。

 

3. アメリカの中間選挙(US midterms)

2024年はアメリカの大統領選であり、今年はそれを占う中間選挙です。なぜリスクに挙げられているかどと言うと、RepublicanとDemocratが双方嘘を展開し、もはやなにが真実なのかわからないからです。そして困ったことに、SNSなどの効果(自分の見たい情報がTechでコントロールされていること)により、嘘を真実と信じてやまない人たち、嘘を嘘だと理解していない人たちがこれまでになく増えています。

 

さらに、もし2024年にトランプ元大統領が再選を狙い、失敗したら、今度こそ選挙を「stolen」「broken」にするかもしれず、そうなるとアメリカの、そして世界の民主主義が危機に貧します。

このデータを見るとそれが現実になるほど、アメリカの世論は二極化してしまっていると感じます。

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majority of republicans believe 2020 election was stolen from Trump

 

4. China at home

Xi Jinpingの史上初の総書記第三期目が目前に迫る中、国内では多くのリスクが見えてきている。ゼロコロナ政策の継続が事実上困難になってきていて、かつ経済成長の継続も見通しが読みづらい。

党の影響力という観点でも、特に巨大化した産業、企業が共産党にとって大きなリスクになるため最近は党を上げて引き締めに動き、そこから徴収したお金を次の産業、半導体やグリーン産業、バイオテックなどに振り分けている。

世界で活動する企業は、中国(北京)とアメリカ(ワシントンD.C.)の双方の顔色を気にしながら活動しなければならない、という点で動きが制約される。

 

 

5. Russia

プーチン大統領NATOの拡大、及びウクライナEU加盟を阻止するために、ウクライナとの国境に軍隊を集め、欧米にプレッシャーを掛け続けている。EU諸国はエネルギーをロシアに頼っていることも事を複雑にしており、欧米諸国が歩みを同じくできない可能性もある。

そしてプーチンのそれらの狙いを欧米側が受け入れない場合、というよりもプーチンが満足しない場合、プーチンウクライナがロシア人を虐殺しているという(嘘の)主張を正当化し、その救済のために軍をウクライナに進めるという行動を取る可能性は高いと言える。

 

もちろん、その場合はロシアの通貨や債権は世界で取引されなくなり、NATO諸国がロシアに攻め入る準備をする、など、ロシアにとってはソビエト連邦崩壊以来の危機になる可能性もある。ただ、プーチンは覚悟を決めている可能性がある。

 

また、Risk 3のUS midtermsにロシアが何らか介入する可能性もある。バイデン外交の弱気姿勢に苛立っているアメリカの議員もおり、間接的な介入でもmidtermsへの影響が出る可能性はある。そしてこの介入が事実とされれば、ロシアへの経済制裁が発生する可能性もあり、一触即発状態と言える。

 

そして、ロシアと中国の接近も怖い。

 

6. Iran

口では核開発をやめて経済援助を、と言いながら、(おそらく)現実では核開発を進めるイランに対して、アメリカが取れるオプションが限られてきている。イランへの攻撃をしたがるイスラエルを抑えることができるのか。

すでにトランプ政権下で最大限の経済制裁を行っていたアメリカにとって、バイデンが打てる手は少なかった。そして現実、2021年はイランの行動に影響を及ぼすことはできなかった。

そして、バイデンは軍事圧力を行うことに抵抗を示しており、オバマ、トランプの時代よりも弱気になっている。

一方で、イスラエルは軍事行動に積極派であり、この差が2022年に問題をエスカレートさせる恐れがある。もはやアメリカがイスラエルをコントロールできなくなり、戦争に発展するのでは、ということである。

 

それらの問題は石油化学への上昇圧力となる。

 

7. グリーン化に進みつつあるが、1歩後戻り(Two steps greener, one step back)

各国政府は、中長期的なCO2ネットゼロの宣言を行い、脱炭素への姿勢を鮮明にしてみせた。

但し、足元でその対策への投資が大きく行われたわけではなく、また一方では石油やガス発電への投資抑制、そして石炭発電の廃止により、足元では石油価格の急上昇と燃料不足問題に悩まされている。

この燃料不足問題は、少なくとも季節的には、中国などでの消費増大に向け、次の冬も引き続き継続するだろう。

長期的な方向性(Greeen)と、足元の燃料需要のギャップをスムーズに埋めることは不可能に近い困難と言える。

 

8. 誰も介入しない紛争地帯(Empty lands)

アメリカは世界の警察であることをやめ、中国もそれに代替しようとは考えていない。EU、UK、日本は影響力を強めるだろうが、以前のアメリカを代替するには遠く及ばない。

結果として、海外からの介入がなく、苦しむ国、地域がたくさん出てくるだろう。

アフガニスタンが顕著な例だ。昨年、政府が崩壊し、アメリカが突然撤退した後、無法地帯になっている。タリバーンが、政府のように全土を管理することができていないためだ。結果として、アフガニスタンは世界中からテロリストを集める磁石のような状態になっている。

 

他にも、イエメン(サウジ、イランが介入しての紛争)、ミャンマー(クーデター後の臨時政権を中国が支援し、アメリカは手を引いたことで混乱が継続)、エチオピア(一年以上の紛争が継続)、ベネズエラとハイチ(経済崩壊により、北米、南米への難民が数百万人規模で押し寄せている)

 

もはや冷戦のときのようにはならない。

 

9. カルチャー戦争に負ける企業たち(Corporates losing the cuture wars)

消費者や社員が、SNSなどで発信し、拡散できるようになり、また、キャンセルカルチャー(過去の汚点を追求され、失脚する著名人などが増えた社会現象)に触発されたことで、企業、とくにグローバル企業に対するカルチャーのプレッシャーが高まっている。

 彼らが求めるものは様々であり、職場のダイバーシティ投票権、児童労働、サプライチェーン、人権や環境への配慮など、多様である。

 

コンプライアンス対策は、高い。それはサプライチェーンを遡り、Tier1、Tier2までをモニターしないといけないためである。

仮に主要サプライヤーが人権侵害をしていた場合、その影響は自社に及ぶ。

一方で対策しないこともコストになる。それは多くの国がその対策を求め、目を光らせているためである。

 

更にグローバル企業にとって悩ましいのは、米中どちらを向くのかという問題である。例えば、中国の強制労働を批判すれば、中国政府の怒りを買うことになり、不買運動などにつながる。批判しなければ、西欧側に制裁をかけられるかもしれない。

消費者や社員は、そういう企業に対してスタンスを取ることを求める。

どちらに進もうと、茨の道になる世界だ。

 

 

10. トルコ(Turkey)

エルドアン大統領とその政党は、かつて無いくらい人気をなくしている。失業率は高く、インフレはひどく、リラはどんどん下落していき、それによりインフレがさらに悪化する。

その原因は大統領の間違った経済政策にあることは明白だ。輸入超過の国において、通貨安政策を取り、かつインフレ対策として金利を下げてきた。

エルドアン大統領は2023年の選挙に向けて手は打つだろうが、その効果が見えるかどうかはまだ不明瞭だ。

 

さらに、アメリカとの関係も気になるところである。イランとの取引によるトルコの国内銀行への制裁、そしてロシアとトルコの関係性次第では、アメリカからさらなる経済制裁を受ける可能性もある。

 

経済状況が更に悪化すれば、選挙の前倒しを迫られることになりうる。しかし、そこまで民主主義が成立していないトルコという国において、それは暴力やカオスへと通じる道になる可能性もある。

 

最後に

よく、「中国とアメリカが新たな冷戦時代に突入する」という言葉を耳にするが、それは間違いだ。両国は互いにとても依存しあっている。

そのため、互いに批判し合いながらも、一方では固く手を取り合う状況が続く。互いに、経済的、テクノロジー的に勝ち抜こうと考えている。

そして、そのゲームにEUは参加していない。

 

もはや、中国と、アメリカと、それに挟まれる国々、という構図になり、その他の国は難しい舵取りを強いられる事になりそうだ。

 

 

 

以上です。日本で普通に生きているとこのあたりのリスクの存在を忘れる日々ですが、常にアンテナを高く、視座を高くしてキャッチアップしていきたいと思います。