必読!おすすめビジネス書のご紹介

ビジネス書、何を読むべきか悩みますよね。ランキング上位を買ってみても、案外学びにならなかったり。そんな思いから、おすすめの本の概要を書くことにしました。外資系戦略コンサルなどで勤務した私が、おすすめの本をご紹介します!参考になれば幸いです!

知的財産戦略(丸島儀一)

戦略と実務をつなぐ、具体例に溢れた名著です。

ゼロックスの特許網をかいくぐって複合機を開発したり、パテント・トロールと戦ったり、臨場感ある内容がとても楽しめます。

ここまで知財を深く活用している方が日本にいるというだけで嬉しいです。あらゆる企業がこのようになってほしい...!!

 

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知的財産戦略

特許では強みを伸ばしても弱みの解消にはつながらない。

特許さえ取れば事業ができると考えるのは誤っており、第三者特許権の排他権に影響される特許発明は、その排他権の影響を取り除かない限り実施できないのである。

  • 例えば、転がらない鉛筆(芯からの半径が同一ではない鉛筆)という特許を他社が取っていて、自社が三角の鉛筆に消しゴムがついたもの、をいう特許を取ったとする。新規性があり特許は取れるかも知れないが、その製品を作ることは他社の特許の侵害になる。

知的財産では強みと弱みの両面があり、強みだけを伸ばしても弱みは解消しないと言う点が独特である。

例えば相手が持つ特許を改良して特許出願したとしても、相手が持つ包括的な特許をクリアしなければ、自社はその特許を使用した場合相手の特許の侵害に当たる。

相手が持つ排他権をなくすには、権利を無効化するか、契約で無力化するか、ライセンスを受けるか、相対的知財交渉するかなどにより、自分が使える立場を作るしかない。

特許を取る範囲を自社の事業に限定しすぎない

中小企業にありがちなミスとしては、自分たちの開発品、 部品に対する特許しか取らないことにある。そうではなく、自社の製品を使うことにより効果が出る装置、用途まで特許を取り、部品事業が優位に展開できるようにすべきである。

顧客企業に用途の特許をとられてしまっては、1サプライヤーとして終わらざるをえなくなる。

知財人材の育成

知財の役割は、事業戦略を優位に実行せしめる知財力の形成と知財活用活動を行うことにある。 組織力も大事ではあるが、知財領域ではそれ以上に各個人の力が重要となる。

知財人材の育成としては、相談された案件に対して厳しい法律判断を下にノーと言うだけ ではなく、合法的にイエスにする知恵と活動ができる知財担当者を作るようにすることが重要である。

知的財産の創造サイクルは、創造(研究開発の成果)、権利化(権利形成)、活用(交渉、契約、訴訟)となる。これら各フェーズで必要な力は異なるものの、いずれも重要であり経験が物を言う。創造や活用のフェーズでは、社内のあらゆる技術部門との連携も必要となる。

特許網戦略

ある製品のコアとなる技術の特許を取得しても、それは20年間しか持たない。研究された技術が上市するのが10何年後という場合、特許により守れる期間がものすごく短くなる。 その対策として、周辺の特許を徐々にとっていき、仮にコア技術の特許が切れても、参入が容易ではない状況にするものである。

例えばキャノンの複写機であれば、感光ドラムのコア技術は特許切れになっても、ゴムブレードの改良や、プロセスカートリッジ技術の改良などの特許に支えられ、実質的にコア技術の特許が取れている状況を継続できる。

このような特許網戦略を考えることが知財戦略の1つである。

先使用権による保護は各国ごと

特許権を行使された場合に抗弁の根拠とできる権利として、先使用権がある。 特許となった権利が出願された時よりも前から実施していた、または実施のための準備をしていたことを理由として、特許権に抵触していたとしても一定の範囲で実施ができる権利である。

特許出願による技術流出防止のために、むやみに出願せずに先使用権を活用することも1つの戦略である。ただしその場合、国によって制度が異なり、日本による先使用権は日本でしか効果がないことに注意する。

発明を公開しないで権利を利用するのは、発明の公開の代償として権利を付与する特許制度の目的に反するものであるため、例外的救済措置である、と理解すべし。

またその場合、保護の対象になるのは元々使用していた範囲の技術、用途に限られるため、用途を変えたその技術を使用した場合は、他社の特許を侵害することになる。

三者特許権を意識した研究開発活動を行う。

研究テーマを決める際、先行技術の調査に加えて、先行特許の調査を行うべきである。すでに第三者の権利が存在しているのであれば、それを解消するかそれを避けるかしなければ事業につながる事は無い。

このときの調査のレベルは先行特許がどれくらいあるかを見る程度でよく、全件の調査は不要である。しかし、その技術についての基本特許の有無は、最初にはっきりさせておかねばならない。基本特許の検討には権利の実態、特に排他権の強さを適切に検討することが重要である。

具体的に先行特許の有無を調べるには、データベースの中から参照回数の多いものを見ていくという方法をとることもある。基本特許はそれ以降に申請された特許に対する拒絶理由として引用されるため、参照回数が増えるからである。

先行特許を調べた結果、他者の権利や出願が多く特許マップが黒だったとしても、その研究を避けるべきというわけではない。特許には20年の有効期限がある。自分の研究が事業になるまでの時間と、それらの特許が特許切れになる時間を見比べながら、事業化されたときに残っている特許を想像しながら見るべきである。

そして、事業化されるであろうタイミングで残っている強い特許を無効化、または回避するような方向で研究を進めれば何ら問題はない。

他者の権利はその後も絶えず調査を行う必要がある。自分だけでなく他者も同時に進んでいるからである。

権利を調査する際、最終的には特許の請求範囲を見ながら判断していく。改良特許でクレームが狭いものは、ほとんどの場合無視して良い。ここで重要なのは本質的に基本特許なのかどうかを正しく評価することである。

ライセンスを受けざるを得ないときは一括払いでタイミングを見計らって交渉すべし

三者の特許が自社の研究に影響があると判明したら、知財部門はその特許をどのように解決していくかを考える。ここが知財部門の活動で1番大きなポイントである。 権利者が誰であるかにもよるが、同業でない場合はライセンスを受けることも含めて早めに解決した方が良い。その場合一括払いで、早い時期に解決すべきである。自社の研究が進むにつれ特許出願広報などから自社の研究開発動向を相手が知ると、その価値が上がってしまうことがあるためである。

逆に、特許のライセンスをする際、相手の子会社にも使用を認めるのが通常であるが、その際に「現在の子会社」と規定をすべきである。将来的に他者とジョイントベンチャーを作られてそこも利用するなどが起きるからである。

また、相手が他社にM&Aされた場合、ライセンス契約を無効にするという条項も忘れてはならない。自社の競合に相手が買収された場合に大いに不利になるからである。

共同研究を始める段階で知財共有は契約する

共同研究を他者と行う際は、 相手との知財共有の方法を事前に契約すべきである。注意すべきは「共有」の意味が国によって異なることである。

また、海外で研究を行おうと思った場合でも、多くの国にはその国で発明した技術はまずその国で特許出願をしなければならないというルールがある。 加えて、そもそもその技術を海外、つまり母国に持って帰れるのかどうか、それで作った製品を輸出するための条件がある、など細かいルールがある場合がある。 そのため、共同研究を行う相手、または自社が進出する予定の国の特許法や、輸出管理法、商品の輸出入に関するルールを事前に調べておく必要がある。

知財活用はタイミングが重要

知財の活用においては、攻められてから解決しようとすると、自社の事業を守らなければならないため、取れる行動が限定され圧倒的に不利になる。むしろ積極的に自社から攻めに出て弱みを解消する戦略をとった方が良いのである。

簡単に言えば、製品を売り出す前に攻めの特許で和解を狙いに行く方が、売り出した後に訴訟されるよりも圧倒的に得るものが大きい。

知財を持っていても、攻めなければもっていないのと同じこと。

秘密保持契約には罠がある

秘密保持契約の際は、「第三者への開示の禁止、情報漏洩の防止」と、「目的外の使用の禁止」という2つの条項に注意すべきである。いずれもそれを行っていないことの証明がとても難しいからである。

例えば、機密情報を大部屋のキャビネットに保管をしていたとする。そうするとそれを周りから盗み見た人がいるかもしれないし、そこから盗まれたとしてもそれは情報漏洩になってしまう。

望むべくはこの2項を削除することであるが、それができない場合にも自社が通常行っている機密管理手段に準じ、それが守れていれば機密漏洩が起きても責任を問われないなどの設定をすべきである。

法律事務所の第一顧客の立場を得ることが重要

連携すると決めた事務所とは信頼関係を築くように努め、自社が第一のクライアントであるという条件で仕事を依頼する。利益相反が起こったり、そもそも特許においては出願のために事務所側が大いに技術面を勉強しなければならない場合も多い。

そのため、事務所にとっても自社が大事であるという状況を作らないとなかなかうまくいかない。 仕事が遅いとか費用が高いとかそれは二の次である。

望むべくはそのような関係を各国の事務所に作っておくことである。そしてそれらの連携も重要となるため、事務所同士の相性も気をつける必要がある。

 

 

出典:

知的財産戦略