必読!おすすめビジネス書のご紹介

ビジネス書、何を読むべきか悩みますよね。ランキング上位を買ってみても、案外学びにならなかったり。そんな思いから、おすすめの本の概要を書くことにしました。外資系戦略コンサルなどで勤務した私が、おすすめの本をご紹介します!参考になれば幸いです!

USJを劇的に変えた、たった 1つの考え方(森岡 毅)

USJを再建し、最近では西武園を建て直した(道半ばですが)森岡毅さんの著書です。

 

マーケティング、というと「クリエイティブ全然わかりません!自分、センス無いです!」のように感じて難しそうに聞こえます。

本書を読み、マーケティングとは戦略を考え、地道に作戦を実行し、それを振り返るものであると理解できました。そしてそれは戦略論と同じでとてもしっくり来ました。

なにより、【マーケティング=広告】、ではなく【マーケティング=4P全てを戦略的に動かし売上を伸ばすこと】というように広く認識していこうと思いました。

 

USJを劇的に変えた、たった1つの考え方 成功を引き寄せるマーケティング入門 (角川書店単行本)

 

マーケターとは、誰がなんと言おうとカレーすき焼きを作らせない仕事。

人というものは、できるだけ他人との衝突を回避したがる性質を持っています。その結果、「皆の意見」という利害を足し合わせて頭数で割ったような妥協案を求めがちです。いわゆる「落としどころ」というやつです。しかし「落としどころ」は、ほとんどの場合において消費者最適ではありません。

ある人はカレーライスが良いと言う。別の人はすき焼きが良いと言う。そんなときに多くの会社では、誰かが頑張らないと「カレーすき焼き」を作って消費者に提供してしまうことになります。もしあなたがマーケターであれば、自分が何を食べたいかは一切関係なく、消費者が何を食べたがっているかのみを深く洞察しなくてはいけません。

消費者がカレーライスを食べたがっているとわかったときに、あなたが取るべき行動は、社内をカレーライス一本でまとめることです。決して「カレーすき焼き」を作らせてはいけません。

誰が何と言おうと、たとえ社長が「すき焼きが良い」と言っても、カレーライスで説得しなくてはいけません。消費者の求めるベストであるカレーライスで押し通す。それができなければ会社を勝たせることができないのです。

こういうストレスのかかる環境で馬力が要求されるのもマーケターの宿命です。マーケティングをやる人は、そういう社内意思決定に関わる多くの部署や個人間のしがらみの中心に立たないといけません。

しかも部門や人々の間に立って利害を調整するだけの「伝書鳩」では仕事にならないのです。自分起点で周囲を説得し倒して、人を動かすことが重要。自分が信じる正しい方向に、自分以外の全員を説得して巻き込んでいく気概が必要になります。

大変ですけど、やりがいも凄まじいものがあります。マーケターとはそういう仕事です。

 

Bad Strategy & Good Execution が最悪な結果を導く。

企業にとって「どう戦うか(戦術)」の前に「どこで戦うか(戦略)」を正しく見定めること、がとても重要です。

Good Strategy & Good Execution は正しい方向に突き進むので、もちろん最も良いものになります。例えばTDRからUSJに行くことを考えた場合、「正しい方向に」「良い手段(飛行機など)で」進むことになります。

一方で、最悪なのはBad Strategy & Good Executionの場合。上記の例で言えば「間違った方向に」「良い手段で」、全力のスピードで進むことになります。

この2つの間に来るのが、

  • Good Strategy & Bad Execution
  • Bad Strategy & Bad Execution

Bad x Badの組み合わせよりも、Bad Strategy & Good Executionが悪い、というのは直感では違和感ですが、例を考えれば明白です。そして、そのStrategyをGood にするか、Badにするか、が経営者や、マーケターの仕事なのです。

 

WHO:ターゲットは絞り込みが最重要。広く薄く、は最悪。

WHOとは限られたリソース(経営資源)を投下する目標となる消費者のことです。限られたリソースを消費者全員に投下すれば、1人当たりのリソースは薄くなってしまいます。

マーケティング予算をターゲット数で割ったものが1人当たりのマーケティング予算です。それが認知形成や購買意欲を掻き立てるのに十分であれば良いのですが、たいていの場合、薄い予算では「勝てるライン」に届かず、全負けになる可能性が大きいのです。そのことをコメディアンのビル・コスビー

「ターゲットを選ばずに全員を喜ばせようとすることが失敗のカギである」

と言っています。

マーケターは、ターゲット1人当たりのマーケティング予算が十分 (Sufficient)になるように、ターゲットを選ぶ必要があるのです (Selective)。そのターゲットの選択をWHOと呼びます。

 

市場分析は、市場構造を味方につけるために行う。

戦況分析とは、「市場構造」をよく理解して、それを味方につけるためにやるのです。

ビジネスに限らず、人間の営みは全て「構造的な仕組み」に収束していきます。多くの人間がいて社会を形成し、絶えず無数のミクロの利害が衝突して力学が蓄積され、全体としての構造が定まっていきます。「構造」とは、わかりやすく言えば、「全体としての人々のやり方」です。

 

例えば、私がかつて売っていたシャンプーなどのヘアケア市場では、製造メーカーサイドのさまざまな事情、流通(卸や小売など)の事情、最終購入者である無数の消費者の事情、それら全ての力学がぶつかり合って、ある一定のやり方に収まってきました。それが現在のヘアケア市場の「市場構造」です。

 

この市場構造を1つの機械(マシーン)と捉えて、その仕組みをちゃんと理解することが重要です。どの利害関係がどう繋がっているのか、何が何によって決まっているのか、どこを押せば何がどう動くのか……。市場構造を無視した手前勝手な戦略を推し進めても成功することは難しいのです。

水は高いところから低いところに流れます。それが自然の摂理です。水を低いところから高いところに流すことは不可能ではありませんが、多くのエネルギーが必要です。同じく市場構造に逆らうことも不可能ではありませんが、膨大な経営資源が必要になるのです。画期的に思えた戦略や戦術が、実行してみると上手く行かない場合の典型的なパターンがこれです。その戦略は知らず知らずのうちに市場構造における自然の摂理のどこかに逆らってしまっているのです。

 

戦略を立てることが苦手な人の大半は、自然の摂理を見極めるための市場構造の理解が足りない上に、そもそもの認識が甘いのです。

 

戦況分析を本気でやる理由は、市場構造に逆らって確実に失敗する「地雷」を避けるためです。そしてできればその市場構造を自分の味方につけられるような戦略がないかを考えるためです。水の流れに逆らうより、水の流れを利用できないかを考える方が得だからです。

 

 

戦国時代の軍師は、これを「必死」にやっていました。現代の我々は、どれくらい必死に状況分析ができているでしょうか。それができなければ、戦車に竹槍で突っ込んでいくのと同じです。

 

マーケティング・ミックスの4Pを、マーケターは全て動かせるか

有名な4Pですが、これはマーケティング実施のための引き出しです。本来、マーケターはこれを自由に操りながら勝っていかねばなりません。

しかし、製品や価格の決定権はマーケターに与えられていないケースのほうが多いのではないでしょうか。少なくとも日本企業ではそうなっていることが殆どと思います。

日本はマーケティングに弱いと言われてきましたが、そのあたりの意識を経営者、そして全てのビジネスマンが変えていくことがスタートだと感じました。

 

マーケティングは誰の、なにを満たすか、を決めてからどうやって、を考える

1.リーチすべきコアターゲット(WHO)を決める

2.消費者インサイトを集め、見つけ、コアターゲットの考えのコアを見つけます

3.そのコアに合致するニーズ(WHAT)を見つけ、そのニーズを満たす打ちて(HOW)を考える

この順番で考えていきます。いきなりTVCMなどのHOWに飛びつかないようにしてください。

既存ブランドが成長したい時に有効なコアターゲットを発見する6つの切り口

1.ペネトレーション : カテゴリーの中で自ブランドの世帯浸透率を増やせるグループはいないか?

全世帯の中で自ブランドを使用している世帯の割合を世帯浸透率ペネトレーション(Penetration)と言います。もし自ブランドの浸透率を伸ばすための「空白地」を見つけることができたならば、それは有力なコアターゲットになる可能性があります。

例えば、USJが新ファミリーエリア「ユニバーサル・ワンダーランド」を建設したのは、「小さな子供連れファミリー」という大きなグループがUSJにとってはペネトレーションを上げていくべき大きな余白だと判断したからです。

 

2.ロイヤルティ : 既存の使用者の中で「SOR(Share of Requirements)」を伸ばせるグループはないか?

SORとは、1年の間に消費するそのカテゴリー全体の消費量に対する自ブランドの消費量の割合、カテゴリー消費量に占める自ブランドのシェアです。これを大きく伸ばせそうな消費者グループを見つけると、それはとても良いコアターゲットになる可能性を秘めています。

典型的な例は、マイレージカードやポイントカードです。競合ブランドをブロックし、連続でそのブランドを消費させるように仕向けるやり方です。

 

3.コンサンプション : 既存の使用者の中で1回あたりの「消費量」を増やせるグループはいないか?

1回あたりの消費量(Consumption)が増えれば、自ブランドの売上を伸ばすことができます。これが見つかれば売上の向上に非常に有力なコアターゲットとなります。

有名な話では、味の素が容器の穴の数を増やしたところ、飛躍的に消費が伸びたということがありました。テーマパークでは、日帰り客を宿泊客に変えること等が当てはまります

 

 

4.システム : 既存の使用者の中で使用商品の種類(SKU数)を増やせるグループはいないか?

消費者が同一ブランド内で複数商品を使うことをシステム使用と言います。これも多品種を出しているブランド(化粧品など)では非常に有力な手段となります。わかりやすい例では、シャンプーだけしか使っていない消費者にコンディショナーやトリートメントなども使わせることができないかを考えること等が当てはまります。

 

5.パーチェス・サイクル : 既存の使用者の中で購入頻度を上げる(購入サイクルを短くする)理由を作れるグループはいないか?

例えば、散髪屋さんが全客平均で5週間に1回来店していたサイクルを4週間に1回に縮めることができたならば、1人も客を増やさなくても年間の売上は2割も向上します。そのようなグループを見つけられたならば非常に有力なコアターゲットになりえます。

 

6.ブランド・スイッチ : 競合ブランド使用者の中にブランド変更の可能性の高いグループはないか?

文字通りの競合ブランドユーザーから奪ってくるためのコアターゲットの設定です。ブランド・スイッチの必然を作れそうなグループを見つけたとき、果敢に攻めるのもコアターゲットの設定のやり方です。しかしながら、これを6つ目にもってきたのには理由があります。

経験上、エネルギー (リソース)がより多くかかるのでハードルは高めです。他の5つで有力なコアターゲットが見つかるのであれば、敢えて選ぶ必要はありません。

 

 

以上の6つのどれかがあるのではないかと自分に加圧して考えてみて下さい。きっと有力なコアターゲットを見つけられると思います。

もし見つけられないのであれば、まだ消費者理解が足りないということです。解決策の切り口は、ほとんどの場合において消費者理解の中に埋まっているものです。マーケティングの真髄は消費者理解にあるということを決して忘れないで下さい。

WHATやHOWよりもWHOが大切なのです。

 

理性を「はっと」させるか、感情を深く「エグる」強い消費者インサイト

コアターゲットが明確に定まったのならば、コアターゲットの深い深層心理を探りましょう。

「消費者インサイト」を見つけるのです! 消費者インサイトとは「消費者の隠された真実」のことで、この消費者インサイトをコミュニケーションで衝くと、消費者の認識が大きく変わったり感情が大きく動いたりします。

インサイトを衝かれることで消費者は自社ブランドのベネフィットを大幅に理解しやすくなったり、欲しくなったりするのです。消費者の認識を大きく変えるインサイトをマインド・オープニング・インサイトと呼び、消費者の感情を大きく動かすインサイトをハート・オープニング・インサイトと呼びます。いずれもブランドの便益を売る驚異的なジャンプ台となります。

消費者インサイトと消費者ニーズは違います。インサイトはあくまでも隠された真実であって、指摘されてみて平気で「そうだよ」なんて消費者に反応されるものはインサイトではないのです。

 

「いや、そんなことはないよ!」と拒否してみたくなったり、考えるのが嫌だからできるだけ考えないようにしているものがインサイトです。

強い消費者インサイトは、理性を「はっと」させるか、感情を深く「エグる」ものです。

 

マインド・オープニング・インサイトの例を挙げましょう。理性をはっとさせます。これはP&Gの同僚がやった素晴らしい仕事ですが、洗濯用洗剤「アリエール」の話です。「除菌ができるアリエール」という新バージョンを発売したのですが、さっぱりうまく売れません。当時は衣服に菌がいるなどという消費者の認識はほとんどなかったので、洗剤が除菌をするメリットが消費者にはピンとこなかったのです。

そこでその同僚はマインド・オープニング・インサイトを見つけて衝きました。「部屋干しの衣類からニオイがするのは衣服にたくさん菌がいるから」というインサイトです。このインサイトによって、消費者は「あー! なるほど! 服には菌がついていたのか!」と除菌という便益の価値を一発で理解することができるようになったのです。これで除菌ができるアリエールは非常にシェアを伸ばしました。

 

 

強みを伸ばして成功する

会社はあなたの何に対して給料を払っていると思いますか? それはあなたの会社への貢献に対して払っているのですが、もう一段深く考えてみましょう。「あなたの貢献」は何によってもたらされるのか。それは必ず、あなたのもっている「強み」を活用してもたらされるのです。

ということは、会社はあなたの強みに対して給料を払っているということ。

あなたが誰も知らないところで続けている「弱点克服」の努力に対して給料を払っているわけではないのです。給料を上げたいならば、本来はあなたの強みを高めるべきです。

 

しかし会社人事でよく見られるのは「ここをできるようになりなさい」とか「ここが弱点だから克服しなさい」といった、その人の弱みの指摘と強調です。

もちろん弱点克服が無駄だとは言いません。目指すキャリアステップに対してどうしても引っ掛かってくる要素を最低限のレベルまで高める努力は、私自身も経験してきましたし、部下にもさせてきました。自身の弱みに向き合うことも、より高く飛ぶためには必要でしょう。

 

ただ、日本人の多くはあまりにも弱点克服に比重を置きすぎた「ドM気質」ではないでしょうか? 弱点克服も大事ですが、それ以上に大事なのは自身の強みをよく把握して、それをもっと圧倒的な強みになるように伸ばしていくことだと私は信じています。

なぜかって? 弱点克服なんてほとんどうまくいかないじゃないですか(笑)。何十年も生きてきた人間の性質が、そんなに大きく変わった事例など私は見たことがありません。

ちなみに私が最初のボスに注意された弱点と、最近のボスから指摘されている弱点は、程度の差はあれども全く同じです。「多くの人と仲良くやること」です(笑)。

まだ経験の浅い子供の食わず嫌いの苦手意識ならいざ知らず、それなりに経験を積んできたいい年をした大人が、強みと弱みのバランスを大きく変えるなんて、まあ難しいでしょうね。

 

つまり傾向は変わらないはずです。ナスビはどうやってもキュウリにはならないのです。やっぱりナスビはナスビのままなのです(笑)。

 

人から見えるのは、Behavior (行動)だけ

人間の行動はなかなか思ったとおりにすぐには変わりません。それはなぜか?

「行動」というものがどうやって生み出されていくのか、その構造から理解してみたいと思います。図を見てください。一番外側に Behavior (行動)、その内側に Skill(技術)、さらにその内側に Mindset(意志・心構え)、そして全ての中心に Value(価値観)があります。内側のものが、外側を支配しています。

Value によってMindset が影響され、Mindsetによって Skill が影響され、Skill によってBehavior が影響される関係にあります。

 

Mindset を支えているのはその人の Value(価値観)。Value = Mindset - Skill - Behaviorの順で影響を与えています。逆に言えば、強みとなる Behavior を発揮したい人は、まずは適切な Skill を獲得せねばならず、Skill を得るためにはそれに見合った Mindset を持っておく必要があり、その Mindset になるためにはそれに合った Value が必要となります。

人間の Value を変えることは非常に難しいとされています。その人の Mindset は Value に抵触しない範囲にどうしても限定されてしまいます。

 

その人の価値観に矛盾する心構えを持つことは無理ということです。そしてマインドセットが変わらないとスキルは獲得できませんし、スキルがないとここぞというときに適切な行動を取ることは難しいのです。

自分の行動を変えたいとき、あるいは部下に何らかの行動改善を促したいときに、行動だけをみるのではなく、その内側にあるスキルやマインドセットの階層をしっかりと洞察しなくてはいけません。

 

 

以上です。自分の経験からも、このパートはとても実感できたので思わず引用しました。

ちなみに私が最初のボスに注意された弱点と、最近のボスから指摘されている弱点は、程度の差はあれども全く同じです。「多くの人と仲良くやること」です(笑)。

 

たしかに、弱点克服ばかり気にしすぎず、強みを伸ばさないと、尖った人材になれず、市場から必要とされなくなってしまいそうです。

 

マーケティングに関わる方も、そうでない方も、是非一読をおすすめします。

そして、ぜひ学生に読んでほしいと感じました。

 

 

出典:

USJを劇的に変えた、たった1つの考え方 成功を引き寄せるマーケティング入門 (角川書店単行本)