内村光良リーダー論 チームが自ずと動き出す(畑中翔太)
ウッチャンはリーダーとしても超一流だった、ということを初めて知りました。
畑中さんの本ですが、何人にもインタビューをしながら事例ベースで書かれており、現場がとてもイメージできました。それが故に、ウッチャンの動きが目に浮かぶようであり、学びを覚えやすいです。
こういうリーダーになりたい。
背中を見せるリーダーシップ
内村はテレビや舞台の現場で関わる共演者やスタッフに対して、「こうした方が良い」といったアドバイスやダメ出しを全くしない。そのかわり、その言葉がいらないほどに彼は自身の行動で仕事とはどう向き合うべきか、現場ではこうすることが大事だということを語っている。
内村は努力を怠らない人だ。そして内村はその努力する姿を、成功だけでなく、失敗に終わろうと、てらいなく周囲にさらす。
リーダーはつい、間違いやミスを犯さない完璧さをリーダーの大事な資質と捉えてしまいがちだ。しかし、チームを動かすリーダーに、完璧さは必要条件ではない。
人を動かす上で大切なのは、人の心を動かすことである。そして人の心を動かすトリガーは、「パフォーマンスの素晴らしさ」ではなく、素晴らしいパフォーマンスを行おうと「努力する姿勢」にある。
そして、その努力を楽しんで行っている姿を見せることができれば、チーム全体の雰囲気を楽しいものに変えることができる。だからこそ、目指すべきリーダー像は、「一番汗をかいて大変そうな人」、ではなく、「一番楽しんで汗をかいている人」なのである。
リーダーが自ら先導する
相手の立場や肩書に上下をつけないゆえに、内村は自分自身の立場にも固執することなく、肩書以外のことも平然とやってしまう。
例えば、映画の収録中に大雨が降り撮影が中断した時、グラウンド整備を監督自ら手伝っていた。この何気ないリーダーの行動は、チームにおける大きなモチベーション創出の呼び水となる。
リーダーが先導者として模範を示しチームを牽引していくだけでなく、時に伴走者としてみんなに寄り添い、一緒に汗をかく。そんなチームにはどの工程にもリーダーが目配りしてくれている安心感があると同時に、プロジェクト細部の進行の滞りをもリーダーが把握するため、手が抜けない、気が抜けないといった程良い緊張感も醸成できる。
リーダーが細部に関与する行為は生産性を下げるようにも見えるが、その方が共に働くメンバーの信頼感は高まり、そのリーダーに尽くしたくなる原動力を生む。
チームを強くするマネジメント
人間のパフォーマンスを100%出すためには、強制的な努力ではなく、自発的な努力が重要である。だからこそ、頑張れば超えられそうなハードルを課す必要があり、部下がそれに納得して目標を受け入れることで、自発的な努力を引き出すことができる。
そして振り返りにおいて内村は必ず自分からどこが良かった、どこが面白かったということを伝える。 少し難しいハードルをクリアしたことを素直に褒めるのだ。
一方、どこが悪かったという指摘は基本的にはしない。もしする場合も、皆の前ではなく1対1の場で話をする。
リーダーが自分自身のスキルが高まれば高まるほど、相手に考えさせるためにボールを渡すということをしなくなっていく傾向がある。内村は、意図的に相手にボールを、それも突然に渡すようにしている。 その時の聞き方は実にフラット。その口調は温和で穏やかだが、聞かれた方は どきっ としてしまうような本質的な問いが少なくない。そのボールがいつ飛んでくるか分からないため、チームには緊張感がうまれる。
リーダーだからこそ、個人的に機嫌が悪いという状況を作ってはならない。機嫌を現場に持ち込まない、それはつまり、部下たちが職場においては仕事だけに集中すれば良い環境を生み出すことにつながる。
よく、今日は上司が機嫌が悪いから、などと言うことがあるが、それはつまり部下が仕事に集中できていないということになる。リーダーとしては、機嫌が悪い状況を常に作らないことで、チームの生産性を上げることができる。
内村は、どんなスタッフも名前を必ず覚え、名前で呼ぶようにしている。そしてスタッフが番組を去る時は、握手をしながら「ありがとう」と誰にでも伝える。飲みに行ったりするような深い付き合いはしないものの、内村に覚えてもらえていると言うだけでスタッフは嬉しくて泣き出してしまうようなこともある。
潰れる人を作らない
内村は、誰かを陥れるような企画は好まない。特にその対象者に力がない場合はなおさらである。
芸人のイモトがデビューしたての頃、もちろんイモトにはどんな企画も断るような力がなかった。そんなイモトに対して、バンジージャンプを飛ぶという企画を作ったプロデューサーがいた。普段は怒らない内村も、それについては直接注意をした。
さらに、新人であるイモトに直接電話し、「今後は本当に嫌な時は断ってもいい。自分で断れなかったら俺が話すから、俺に電話しろ」と連絡をしたそうだ。誰も傷つかないようにする、ということを本能的に気にしている。だから、内村の関わるチームで潰れる人がでない。
また、内村もリーダーとして部下に指導しているが、その際に「否定」「批判」「非難」といった行動は取らない。他人の落ち度を責めないし、怒らない。そもそも、怒っても状況は変わらない。怒るという事はリーダーのやり場のない感情をなだめるために行っているだけのことであり、本質的には価値は無い。
相手が悪いことをしてしまったと認識しているのであれば、ミスの指摘すらしない。否定したり、非難しても本人の意識が変わらなければ何の意味もないからである。
以上です。ご参考になれば幸いです。
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