必読!おすすめビジネス書のご紹介

ビジネス書、何を読むべきか悩みますよね。ランキング上位を買ってみても、案外学びにならなかったり。そんな思いから、おすすめの本の概要を書くことにしました。外資系戦略コンサルなどで勤務した私が、おすすめの本をご紹介します!参考になれば幸いです!

Team of Teams 複雑化する世界で戦うための新原則(スタンリー・マクリスタル)

まとめ

とても珍しい、軍人が書いたビジネス本です。記載してある具体例や筆者の考え方は軍隊のものですが、組織の作り方・変え方、リーダーの動き方、とてもビジネスの状況に似ており、勉強になります。

アルカイダの出現により軍としての戦い方、組織を大きく変えねばならなかったことは、新たな技術・競合の出現によりビジネスの戦い方、会社の組織を大きく変えなければならないこととピッタリ重なります。

事例を読むのも面白いですし、その上、かなり大きな学びがある本でした。とてもおすすめです。 

TEAM OF TEAMS <チーム・オブ・チームズ>

 

抜粋と考察

トラファルガー海戦において、イギリスのネルソン提督はナポレオン率いるフランス・スペイン連合艦隊を打ち破った。戦術的には、当時主流であった「敵艦隊に並行して戦うスタイル」から、「敵に垂直に戦うスタイル」に変更したことが要因であると言われるが、真の勝因はネルソンが作り上げていた、組織文化である。
 
ナポレオンは彼が指示したものを実行するための部隊を持っていたが、ネルソンは一人ひとりの艦長が独自の頭を持ち、自ら考えて行動するという組織文化を作っていた。
それにより、敵艦隊に一糸乱れず直行するという、実行が難しかった戦術を、(当のネルソン本人が敵の銃弾により死んでしまった後でも混乱を生まずに)実行することができた。各艦長が、今すべきことを「自ら」考え、「お互いの信頼」をもとに実行した成果である。
 
ネルソンの真の才能は、人々の記憶に残る彼の高名な作戦にあたるのではなく、それに先立つ長年の革新的なマネジメントとリーダーシップにあった。
これは、変化が大きい現代におけるビジネスでも同じではないでしょうか。
上司の言ったことを忠実にこなすだけの組織は、その上司の能力が組織の能力の上限値になります。時代が変わると、過去の常識が当てはまらなくなるため、なかなかうまく行きません。
そのため、ネルソンが作ったような、「一人ひとりが考え、ベストを尽くす」という組織文化を作ることでより柔軟で、より強い会社になっていくでしょう。VUCAの時代に欠かせないマネジメントスタイルと言えると考えます。

 

 

1800年代後半、フレデリック・テイラーは工場の効率を上げるために、ストップウォッチを持ちながら各作業を定量的に測っていった。それまでは「職人技」の名のもとに不明瞭だった各工程を細かく分け、それぞれの標準時間を記載し各従業員は1秒単位で効率を上げることを求められた。結果的に、生産性はどの業種でも10倍以上高まった。ピーター・ドラッカーによると、テイラーの生産性の改革がなければ、アメリカはナチスに勝てなかっただろうと言われている。
 
暗黙的に行われていたことを、見える化したことで、各人の成果を比較できるようになり、分業できるようになります。その手法を発明した(というより気づいて実践した)ことで、テイラーは大金持ちになりました。ビジネスモデルのイノベーションですね。
 
 
 

ネイビーシールズの入団試験では、数人で1組のチームとなり、肉体的および精神的に厳しい課題が与えられる。しかし、各試験自体はある程度の能力と経験を積んだ人、つまりネイビーシールズに応募してくるような人であればクリアできない事はないレベルである。それは試験の目的がスーパー兵士の選抜ではなく、スーパーチームの構築にあるからである。

 

単独で行う訓練はほとんどない。初日にメンバーを分け、半年間同じメンバーで試験を行う。スイムバディ(ペアの人)と夜の視界不良の海をコンパスを頼りに何キロも泳いだり、1本のボンベを共有しながらペアで潜水任務を行ったり。

試験初日に「個人行動」という言葉を辞書から削除させるのが教官の重要任務である。たとえ食堂に行く時でもスイムバディと行動を共にしなければならない。単独で行動したものは罰せられ、チーム内の無作為に選ばれたもう1名も同じように罰せられる。試験を通じて、スイムバディとは生涯の友となる。

 

なぜ、この試験をネイビーシールズは導入しているのか。それはメンバー同士が深く理解しあい、信頼しあっているチームほど良い結果を出すことがわかっているからである。優れた個人1人よりも、信頼し合ったチームの方が良い結果を出すのである。

訓練で肉体に大きな負荷をかけるのは、強さではなく目的意識を試すためだ。訓練で脱落しそうなものは面接の時点で大体わかる。「訓練に挑戦してみたい」「私は困難を楽しめると思う」など自分のためを考えている人は大体脱落していくのである。一方で、「ネイビーシールズの一員になって戦いたい」と言うものは脱落しない。

 

優秀な一人がいるチームより、互いに信頼し合うチームのほうが良い成果をあげる、というのはビジネスの世界でも同じだと感じる経験は誰しもあるのではないでしょうか

しかし、それがわかっていてもネイビーシールズのように徹底的にそれを体と心に植え付けることができている企業は聞いたことがありません。

 

アルカイダと戦うために、全世界の複数の組織がお互い情報共有をしながら共闘することが求められた。しかし、自分たちネイビーシールズの他にも、FBIや陸軍などを含め、7,000人もの特任部隊がお互いを知っている事は不可能である。

ただし、全員が知り合いであることは難しくとも、それぞれの組織の誰か1人をよく知っているという状態が各メンバー間で起きれば、かなりそれに近い状態が達成できることがわかった。
そのため、各組織の間で個人的なつながりを構築するような仕組みを作ることを意識した。

 

これも、特に複数拠点にまたがる大企業にはとても参考になる事例です。別の部署の誰か一人でも知っていると、何か合ったときに協力したくなるし、何より理解ができる

誰も知らないと完全に他人扱いなので自らの仕事を増やしてまで協力しようとはしないのではないでしょうか?

 

全世界に複雑な組織を持っているアルカイダと戦うためには、アメリカの部隊の多くのことを変えなければいけなかった。
- 組織間の根深い秘密主義
- 煩雑なアクセス制限
- 部隊間のライバル争い

 

そのために、透明性の高い環境を確立し、特任部隊の一人一人が任務全体の複雑なシステムの中における自分の役割を把握できるようにしなければならない。皆がすべての部門に親しみを持ち、詳しくなり、結果に直接貢献すべきだ。そして結果に貢献していることを自分が気づけるべきだ、と考えた。

実際にアルカイダとの戦いに敗れてから、(=アルカイダの画策した大規模テロを防げない事態が起きてから)米軍の動き方を大きく変えた。
様々なトライを行った末、最終的には、複数の組織をまたいだO&I会議を毎日2時間開いた。各部隊からの最新の情報を報告するようにしてもらい、その場で質問も歓迎された。質問への回答を通じ、上層部が丁寧に思想を伝えることで、単なる指示だけではなく思考回路も組織に浸透していった。

結果として7,000人全員が上層部が何を考えているかを理解し、日々の行動に落とし込むことができるようになってきた。

 

その会議上では、現場を知っている1人の担当者が報告をすることが多かった。各議題に4分の時間があてがわれ、状況報告は1分で行われた。その後3分間を議論に費やすルールであった。

しかし8階層も上の上層部が入っている7,000人もの前で、オンライン上とは言え報告をするのは、担当者にとってはかなり緊張し気が滅入るものである。そのためマクリスタル大将は、その担当者をまずファーストネームで呼び、「なぜぼくの名を知っているんだろう?」と思わせると同時に緊張をほぐす手伝いをした。

また、報告方法等のスキルが気になった際も、あえて指摘はせずに内容の確認をするに留めた。大勢の前でそれをするのは時間の無駄だし、その担当者の直属の上司がすべきことなので、口出しはしないことにしていた。

 

1日2時間も会議に費やすのが時間の無駄になっただろうか?

結局はそうならず、むしろ必要な仕事だけをタイムリーに行うと言う癖が各組織につき、組織の効率は格段に向上した。

ワシントンで朝10時に報告したことが、イラクでは午後5時に受け取られる。分析結果を会議で報告した際に、急襲が必要だ、と担当部隊が判断すれば、そこから計画を立てその日の深夜に行動ができる。
そしてその結果を報告しておけば、翌朝10時に最新情報の分析がまた会議でシェアされる。このサイクルが回ると、アルカイダの組織が気づく前に、先手先手を打って米軍が活動できる。

 

ここだけみると、米軍が大きく変わったことがわかります。しかし、ネイビーシールズやFBIなど、機密事項を多く扱い、お互いプライドが高い組織を変えるのはどのように、どのくらい時間がかかったのでしょうか...トップ一人の行動だけでは到底難しそうに思います。

それが以下で述べられています。

 

各組織が協力し合うようになるまで、2年位かかった。

組織間を協力する関係にするには全員が知り合うのが望ましいが、それは不可能である。折衷案として各組織が人を派遣しあい、あの組織の誰かをよく知っている、と言う状態を作り出すようにした。それによりお互いの組織を信頼し合えるように意図し、それが実現した。

人を派遣し合うといっても、初めはスパイを送り込むようなやり方だった。ここは囚人のジレンマ理論を取り入れた。マクリスタル大将のネイビーシールズから他の部隊に人を出す際は、最上級のエースを送るようにした。飛行機からパラシュート降下し、数km先の敵を狙撃できるメンバーに、スーツを着せ、送り込んだ。ネイビーシールズからすれば、短期的には大きな戦力ダウンである。

エース達は派遣先で煙たがられながらも、組織に入り込み、そしてときには必要な情報提供することに全精力を注いだ。半年から1年もすると、送り込まれたエースの重要性がその組織に伝わり、逆にネイビーシールズに派遣されるスタッフも超優秀層に置き換わるようになってきた。
それが続くと、お互いの組織を信頼しあえるようになった。

 

さらにチームの動きを早くするために、指揮系統のより低いところへ権限を移していった。

とはいえ言うだけでは伝わらない。一部の部下が権限を逸脱し何かを行い、もしくは何かを要求してきた時、私は全員が入る会議の場でそれを承認、もしくは追認した。それにより、その行動が許される、また、求められているということが徐々に全員に伝わっていった。

判断を上司にしてもらうことと、自分で下した判断を上司に承認してもらうという事には、大きな差がある。権限を移譲することで、部下がより深く考え行動するようになっていき、何よりも組織としてのスピードが大幅に向上した。しばらくすると、私は「何が必要ですか?」と言う質問しかしなくなった。

複雑な環境においては、自立型のリーダーシップと言う考え方が必要だと気づいた。上に立つものの役割は、糸を引いて人形を操ることではなくなり、共感によって文化を創造することに変わってきた。チェスを打つのではなく、菜園を育てるように。

リーダーが部下に思いや考えを伝えるためには、行動が最も重要だと気づいた。例えば会議に参加するときに安全なオフィスからではなく、戦場で、ベニヤ板を背景にして参加する、常に現場に足を運び、顔を出すなどである。重役室に座っているだけの人の言うことなど誰も信じられないのである。

同じように、怒っている時や悲しんでいる時も、感情顔や態度に出さないように細心の注意を払った。

リーダーとして振る舞う際のとても重要なことが書かれているように感じました。

そして、「判断を上司にしてもらうことと、自分で下した判断を上司に承認してもらうという事には、大きな差がある。」というのはまさにそのとおりと思います。仕事でも「どうすればよいでしょう?」と聞いているうちは半人前。「こう考えていますが、よいですか?」と言えるようになって一人前だと感じます。

 

そして、トップに立つと人は偉くなった気になりがちですが、マクリスタル大将のように、相手からどう見えるか、動やったら自分の思いが伝わるか、をひたすら考え、実践する、そんなトップと働きたいですし、自分もそうなりたいと改めて思わされました。

 

 

何度も読み返したいおすすめの本です。ぜひ実際に読んでみてください!

 

 

 

※ 引用部分は誤字脱字、また、引用時にわかりやすくするため意図を変えない範囲で編集している場合があります。